好天の樹下美術館 大池いこいの森。

2023年11月3日(金曜日)

本日文化の日の祝日はよく晴れて温かでした。切れ目なく来館して頂き、外のベンチで休む方もいらっしゃいました。

午後の前庭。

 

前庭のベンチで。

田んぼ際のベンチで。
私と同年配のワンコさん。

お天気に誘われて午後遅く大池いこいの森へ行ってみました。

途中のコスモス。

ビジターセンター脇から橋を渡って対岸の森へ。

橋から西を見る。

お目当ての一つオヤマボクチ。
独特の表情は見飽きません。

イノシシが出ることがあると看板がありましたので奥へは行かないようにしました。

もう一つのお目当て
ツクバネウツギ。

コンパクトカメラで狙ったシジュウカラとエナガの群は高く素早くて上手く写せませんでした。ここは鳥たちの通り道のようでしたのでカメラを変えてまた来てみます。

上越市髙田で午後1時30分ころの27,5度が最高気温。向こう数日はまずまずのお天気のようです。

ご来館の皆さま、まことに有り難うございました。

美術作品を観て気を失うことがあるらしい 夕刻の施肥 夕食。

2023年11月2日(木曜日)

先日のNHK-BSで「フェルメールに魅せられて“史上最大の展覧会”の舞台裏」が放映された。予告と途中からではあるが本放送を観た。その前半に主要な関係者が「かってフェルメールの作品を観て気を失った」と述べていた。

絵画作品を観て気を失う。普段耳にしないことだが、今から50年ほど前のこと、それと同じ事を言った人の話を聞いた。当時はまさか大げさな、という感想を抱いたが今回の放映の談話を聴いて、かって語られた話は本当だっのかと思い直した。

その人は東京大学出身の若い男性だった。旅行か仕事だったかでスペインに行った折りプラド美術館でゴヤの「裸のマハ」を観た瞬間、衝撃を受けて気絶した、と帰国後私の知りあいに話している。

音楽や美術には信じがたく素晴らしい作品は多い。だが鑑賞者にも感応性と言うのか上述した二人のように強く反応する人が希にいることも確かなようだ。
ただ極めて素晴らしい作品でもあまねく人を失神させる訳ではなく、倒れた人の感受性に加え作者、作品に対する深い尊崇などの個人史と、当日の体調などの複合的な側面があったのではないかと推測された。
満一ケガが無かったのかは案じられるところだった。

一方音楽と失神はかってよく聞き、ロックやグループサウンズのステージで倒れたり、若い女性客が失神するコンサートがたびたび知らされた。倒れるプレーヤーの詳細は分からないけれども、観客の失神は興奮と絶叫による過呼吸がもたらす反応のように見えていた。
確かに音楽は強い感情反応をもたらす。もしかしたら私が知らないだけで、クラシックコンサートではあまりの美しさや突然のティンパニーで、椅子に座っているため人知れず失神している人がいるかも知れない。

さて本日は昨日に続き暮れてから草花中心に施肥をした。クリスマスローズとアジサイはやや丁寧に、ホトトギスになどにはざっと行った。ホームセンターで求めた軽い用土にリン酸カリを含んだものを混ぜてくべた。来年の元気な庭を想って、もう一日、雪の前に残りの草木と芝生に遣りたい。

クリスマスローズの一部。

ややミニのカツ丼。

テレビで観た温野菜とイカの料理。

ご馳走様でした。

嬉しい短歌 秋の庭 田と池のコハクチョウ。

2023年10月29日(日曜日)

本日日曜日、午後美術館に寄り来られたお二人と一緒に作品を見てカフェでサンドイッチとサラダを食べた。

昨日のことAさんの短歌が8月の新聞に載っていたと言って、Bさんがそのコピーを持参されました。樹下美術館を詠んだ一首でした。

草一本幹一本愛深き聖地なりし樹下美術館

ああ美術館を草木の一本から愛深い聖地とまで詠んで頂き、何と御礼を申して良いやら。
開館以来長くお訪ね頂き当館を愛しておられること、良く伝わっていました。あの熱い夏、弱りの見える庭に温かな眼を向けていただき、本当に嬉しく思いました。
コピーを持ってお知らせくださったBさん、有り難うございました、とても感謝しています。

さて昨日は雨ザーザー。今日は大きな雲がありましたが時おり陽が射しました。以下はBさんに詠んで頂いたその庭です。

昨日、雨降る窓越しの庭。

以下本日午後の庭です。

開館して17年目、
まるで山道のようになりました。

数日前に患者さんからコハクチョウ(以下ハクチョウ)が来ていると聞いていましたので田んぼへ行ってみました。

途中の中谷内池。小さな池ですが米山が見えて良い眺めです。

頸城区はほくほく線に沿った田んぼで二つのハクチョウの群に出会いました。
思った以上の数で合計100羽ほどいました。渡って来たばかりのせいでしょうか、真っ白です。雁もいましたのでこの先ハクガンの到来が待たれます。

傍らのほくほく線に上り電車がきました。

温かそうな薄にくるまれるようにして行きました。

新柿線に出て東へ走ると朝日池の東側の田に200羽ほどの群がいました。

暮れ始めましたので朝日池で鳥たちのねぐら入りを待ちました。

ところが待てど暮らせど一向に鳥は降りて来ません。群は来るのですが皆通過するではありませんか。
水がすくなく枯れた蓮が多いせいで嫌われているのでしょうか。

すると隣の鵜の池から水鳥の鳴き声が聞こえてきます。
行ってみました。

すっかり暗くなっているのですがいました、いました。盛大な鳴き声とともに沢山いました。

おなかいっぱい食べ無事ねぐらに入った鳥たちには、眠りまでのいっとき自由で幸せな時間があるようです。
周囲にはキツネやタヌキ、ともすればハクビシンなどプレデター(捕食者)がいるはずですが、鵜の池や朝日池なら安心なのでしょう。

私にすれば例年よりも早く、しかも沢山来ているように思いました。この先約先5ヶ月、さらに数を増やし皆でゆっくりしてもらいたいと願っています。

「絵付け陶芸三人展」からその3 黒岩卓実さんの赤絵。

2023年10月28日(土曜日)

小雨ときどき驟雨激しかった土曜日。午前はコロナとインフルエンザのワクチンで一時忙しかった。午後珍しく一時間ほど昼寝をし、読書してから美術館でサラダを食べた。

さて「絵付け陶芸三人展」のご紹介、最後の本日は黒岩卓実さんです。前の正木春蔵さん、鈴木秀昭さんと同じように齋藤三郎を追いながら出会った織部と赤絵の作家さんです。

樹下美術館の開設近い頃、新潟市の方から頂いたのが始まりでした。速筆の赤が醸し出す上品さが魅力でした。

主に轆轤を用いない「たたら」と「手びねり」による成形。器の地は肌色を帯び驚くほど軽く、成形する過程の掌や指の跡が窺えて親しめます。
地色に映える赤で線と模様が描かれ時に緑や独特の青と金が添えられます。配分の良い線とともに模様の花や動物あるいは娘さんが気持ち良く描かれます。

以下は展示中の作品からです。

入ってすぐの赤絵大鉢。縁の凸凹は抹茶茶碗でいうところの「山道」でしょうか、楽しい変化です。胴まわりの動物は中の花蝶とともに器全体を生き生きとさせています。

赤い檜垣模様のふちの三カ所に緑と金彩が施された向付。肉も野菜も美味しく盛られます。

向こうに赤絵の湯呑茶碗、手前に菊の模様でしょうか緑のドットがアクセントの小皿です。
湯飲みの軽さと楽しさは誰もが「ああ」と仰います。小皿は豆、羊羹、水菓子などが映え、たびたびブログにも登場しました。茶碗には轆轤目があります。

古典的な印象の比較的大きな深鉢。

黒岩作品は入ってすぐから左回りに6台の展示台に合計8作品を展示しています。
柔らかさ、軽やかさ、爽やかさなど作者独特の美意識が現れる作品は日用に、装飾に楽しい器ではないでしょうか。

黒岩卓実さんは1947年福岡県大牟田市生まれ、岐阜県は美濃地方の多治見に「たくみ」窯を築かれました。
度重なる貴重な受章歴があり、作品は東西の有名デパートほか全国各地の陶芸店、ミセスなど婦人雑誌など誌上でも人気を博しています。
ちなみに日本の焼き物の60%をほこる美濃地方は荒川豊藏、加藤卓夫ほか人間国宝を輩出している一大産地です。

さてこれまで十分ではありませんが、正木春蔵、鈴木秀昭、黒岩卓実の三氏による絵付け陶芸作品を眺めてきました。長く親しんだ齋藤三郎亡き後、代わる絵付け作品を求めて集めた作家さん。

東洋陶芸を源流として独自の九谷エッセンスを現した正木さん。

器に宇宙の色彩と陰影を満たし、形状にも迫る冒険家鈴木さん。

織部に連なる赤絵に健やで上品な生活感を求められる黒岩さん。

このたびは三者三様の個性ある絵付け陶芸作品の展示です。今日の人気を得るまでの努力の膨大さは私などには想像が出来ません。
おごらず一貫した丁寧な姿勢(作品価格も含め)も共通しているように思うのです。

最後にわが齋藤三郎もそうでしたが鈴木さん、正木さんとも源流が九谷というのも不思議な縁です。そこに美濃が加わることで小ぶりな場内に幸福な膨らみが生まれているのを感じています。

昨日の空今日の雷、今日の認知症テスト、看護学生、夕食。

2023年10月25日(水曜日)

本日水曜日、11時半からの運転に関する高齢者認知症検査を近隣の柿崎自動車学校で受けた。16の絵のパターン記憶、羅列数字のマーク、年月日時刻の記載が主な項目。
大方間違い無く回答したと思うが、これがどれだけ事故を減らすものか分からない。いずれにしても私とほぼ同年令や、やや若い人でも運転免許を返納する人が次第に増えていく。

家族の勧め、認知症テストの結果、事故、自ら進んでなど事情は様々だ。一方で田舎の暮らしは運転なしでは不便である。いずれ自分もその時が来るが果たしてどんな形で迎えるのか、自主返納なら一番良いのだが。

検査を終えて午後は特養の回診。
近くの看護学生さんが4,5人見学実習として付いた。施設入所の方のコミニュケーションで、簡単なことでは生まれや実家の場所を尋ねてみること、別れ際にはまた来ますと言うと喜んで貰えるとを話した。

また一昨年夏の心筋梗塞と作秋の検査入院で若い若い看護師さんたちの世話になった。聞けば本日付いた生徒さんの学校の先輩だった。卒業後数年で複雑な手技を身につけ記録を打ち込み当直もしていた。
本日の生徒さんに“2回の入院で皆さんの先輩達が目を見張るほど成長しているのを見た。どうか勉強して後に続いて“と伝えた。
この人達は何を話しても真剣な眼をして聴くのでとても頼もしい。

さて昨日日中は空の色と雲が良く、鵜の浜温泉近くの夕焼けがきれいだった。
以下は午後の四ツ屋浜です。

 

 

以下は同夕、鵜の浜温泉近くの駐車場からです。

そして本日昼は晴れてはいたが均等で灰色、縁が毛羽立った大きな雲が西方でゆっくり発達していた。夕方からゴロゴロと雷がなり始め今も続いている。

そして以下は拙夕食です。

ハクチョウの小さな群をいくつか見たと言う人がいた。

間もなく11月、渡り鳥の季節になった。どんな写真が撮れるだろう。

「絵付け陶芸三人展」から その2 鈴木秀昭さん。

2023年10月24日(火曜日)

現在樹下美術館では10月19日~12月12日の「絵付け陶芸三人展」を開催しています。本日は前回の正木春蔵さんに続いて三人の一人鈴木秀昭さんでの紹介です。

亡き齋藤三郎に代わる焼き物を求めて、しかもどうしても絵付けでなければならず、出会った正木春蔵さんに親しむうち、ふと舞い込んだ展示会のDMは鈴木秀昭さんでした。

DMの作品は抹茶茶碗で、器の全てが色絵と金銀彩のドット(水玉、点)で埋め尽くされ、衝撃的でした。主催者に電話し是非欲しい、と伝えると展示会後しばらくしてまさに現物が届きました。鮮やかな茶碗はほどよい重さで広やか。置き方によって一つの器に昼も夜もありました。

日本の絵画は間や空間を強調します。しかし隙間無く描き込まれた鈴木さんの茶碗は、器の内外に凝縮し拡張する壮大な宇宙がありました。
その後折々各地の作品展のDMが届き、どうしてもと思う作品を打診しました。作者のご好意もあったと思いますが、良い作品に恵まれて幸運でした。

向こう「金彩華花銀河茶碗」、
手前に上述した「金銀彩星座茶碗」
向こうの器の白い肌も美しい。

向こう「宇宙綺羅星茶碗」
手前「金銀彩幾何宇宙茶碗」

上掲写真の綺羅星(きらぼし)茶碗は私の不用心で破損させてしまい、金継ぎをして修復してもらいました。
手前の茶碗はかって新潟市で裏千家茶道坐忘斎お家元が座られた薄茶席で、恥ずかしくも小生がお点前し、主茶碗(おもぢゃわん)としてお出ししました。
家元の優しさに我を忘れて夢心地となり、何とか無事終了させて頂き、終生忘れない思い出の茶碗となりました。

色絵金銀彩の酒器と盃。
オリエントの悠久が覗われます。

色絵金銀彩天空茶碗。
昨年求めた最も新しい作品。

上掲の茶碗は神戸の展示会DMで知りました。求めたいと伝えると、店はこの茶碗で呈茶を催す予定があるが構わないかと遠慮がちに申されました。構わないどころか、一人でも多くの人に楽しんでもらってくださいとお伝えしました。

1959年東京都生まれの鈴木秀昭さんはアメリカへ社会学の留学をしましが陶芸に目ざめ、九谷で修行。宇宙や曼荼羅をテーマにした色絵金銀彩は注目を集め、内外の展覧会で好評を博し多数の美術館で収蔵されています。伊豆を仕事場に器とともにオブジェも大切なフィールドです。

この度の展示では5つの展示台に10の鈴木作品を出品しました。

晴天の日曜日の感動音楽会 庭の花。

2023年10月22日(日曜日)

しっかり二日間降ったあと本日日曜日は爽やかに晴れた。
午前に少し本を読み、来週予定されている高齢者の認知症検査のトレーニングをしてみた。
時間の無駄遣いにも思われるが、少しは脳トレに寄与するのかなと思いながら試行した。本番はどうなるのだろう。

さて本日午後は吉川区出身、プラハ在住のピアニスト市村幸恵さんのコンサート。2019年秋共演されたチェコフィルの第1バイオリン奏者ヴィクトル・マザーチェクさんに、このたびはプラハ音楽院教授・オーボエ奏者ヤン・トゥーリさんが加わった。

会場の大潟区コミュニティプラザホールは何脚も椅子を足したほどの満席。

ドヴォジャーク、スメタナ、スーク、モーツアルト、ショパン、ショスタコーヴィッチのブログラム。知らない曲が何曲もあったが、三人がソロ、デュオ、トリオと変えながら楽しませてくれた。
これまで市村さんが何度か話されたように、チェコでは集まってはアンサンブルを「楽しむ」という。この度はまさにそれで、ある意味即興性まで感じられ、陰影の濃いスリリングな演奏会だったのではないだろうか。

市村さんの至近距離によるショパンのワルツ7番嬰ハ短調は素晴らしく、モーツアルトのドレミファソラシドの妙に驚き、三人で演奏したショスタコーヴィチ5つの小品やチェコ民謡などでは心ゆくまでスラブの情緒を聴かせてもらった。

ヴィクトルさんが編曲した「家路」、アンコールの小山作之助「夏は来ぬ」は場内に歌唱とハミングが満ちた。わけても「夏は来ぬ」のコーダが非常に良く、振り返ると同行した美術館の若いスタッフが感動のあまり涙で目を赤くし、ハンカチで拭いていた。
音楽を聴いて惜しみなく涙をこぼすのは何にも増して素晴らしい事で、私達はそれを観てまた感動したのでした。

会場は旧議場で音楽向けホールではなく、演奏者は苦労したのではと想像したが熱演でカバーし心に残るコンサートになった。

終わって市村さんと少し話す機会があった。次回は現代音楽を1曲とお願いしてみた。良いですね、というお返事だった。

このたびの音楽会を開催された頸北の吉川、柿崎、大潟各区の文化と地域振興グループの皆さま。熱意とご努力に心から感謝申しあげます、まことに有り難うございました。

美術館の庭で秋の花が日射しを浴びていた。

 

 

健康的で良い日曜日だった。

「絵付け陶芸三人展」からその1 正木春蔵さん。

2023年10月21日(土曜日)

筆者の幼少、父は齋藤三郎の陶芸作品に夢中になり収集しました。
器は飾られたり日常の食器として使われ、暗さが漂う家を明るくし、観る喜び食べる楽しみをもたらしました。父母はことある度に器を褒めるので私達子供は器ばかりか齋藤さんまで大好きになりました。

斯くして齋藤作品は幸せの器として脳裡に焼き付きました。ところが昭和56年氏が亡くなると、家に火が消えたような寂しさが漂うのを感じました。その後歳月が経ち亡き齋藤さんに代わる絵付け陶芸家と巡り会いたいと思うようになりました。

この度の「絵付け陶芸三人展」はそんな気持で店や窯、あるいは通販やネットを通して3,40年にわたり求めた三人の作家さんの作品展です。

以上の三人では正木春蔵さんが最初の作家さんです。ある抹茶茶碗名鑑で見た色絵の繊細な作品が頭から離れず、工房を訪ねたのが始まりでした。

石川県の山代温泉は魯山人も逗留した旅館白銀屋(しろがねや)さんのご子息で、近隣に「山背陶房」を営まれていました。同宿に泊まるなどして数回窯を訪ね夕食をご一緒したこともありました。

山に同化したような穏やかさの中に熱い情熱を秘めたお人柄。加えて近隣の作家とともに一帯の陶芸を盛り上げようという意思を明確にされているのが印象的でした。

また道中一緒の時「この森にはエビネが自生しています」、食事では「古唐津の盃が好きな陶芸家が多いようですね」と仰ったのが耳に残っています。

その後東京は六本木「サボア・ヴィーブル」という店でよく正木作品を扱う事を知り上京の折に立ち寄り、店内一段と輝く氏の作品を手に取らせてもらうようになりました。
都内では他に数店が同氏作品を扱っていましたが、店主の人柄から同店に寄りました。

中国風の大きな染め付け楕円皿。
牡丹と獅子が描かれ、
長径30㎝以上はあります。

 氷裂模様が入った大きな器。
尊式に膨らんだ胴に麗しい動物。
なんておしゃれなのでしょう。

美しい蓋が付いた瓶の
独特の間と清々しさ。
多様に描き込まれた盃。

急須と湯飲み茶碗。長い人気を誇るねじり文の湯飲み。向こうに陶器と磁器の大きな急須、中ほどに染め付け急須2器がある。
正木作品は6個の展示台に15作品を出品しています。

上掲尊式の大きな器は30年近く前、ワインブームの折、近隣のDr4人がワインを持ち寄る集まりで、ワインクーラーとして活躍しました。2点ともサボアで求めたと記憶しています。
氏の作品は新鮮なうえ余裕あるいは間や遊び心があり、美しくも楽しい使い心地があります。

遅くなりましたので本日はここまでとさせていただき、続きは次回とさせて下さい。

終日厳しい風雨のなか来館された皆さまに感謝申し上げます。
「今回の展示会の図録は無いのですか」とお尋ねされたお客さま、無くて本当に申し分けありません。それに代わりまして、幾分の詳細をブログに書いてみようと思った次第です。どうか宜しくお願い致します。

人の顔を思い出すと。

2023年10月20日(金曜日)

昼過ぎまで陽が射し蒸し暑ささえあった。それが間もなく雨に変わり、在宅訪問は一時土砂降りとなった。その後もザーザーやシトシトをまじえながら夜に到っている。

本日深夜一時過ぎ、枕元のケータイが鳴った。高齢者施設で看取りが近づいている方が亡くなった知らせだった。着替えて出かけ確認を行い、ご家族に説明し診断書を書いた。

多くの看取りは深夜か早朝で暗い時間が多い。灯りが付いているだけで車がほとんどいない道路を行って帰ってくるが、とても寂しい、

一月前には107才の方がやはり深夜に亡くなられ、あるいはつい最近仕事でお世話になった働き盛りの方が突然死された。
そんな昨夜に大学時代の同級生からメールが入り、仲間二人の死が知らされた。
このような事が続くと広かった世界がどんどん狭く感じられ、代って亡くなった人の顔がポッポッと浮かんでは消える。

およそその方たちの顔は笑みを浮かべ、何か話したり訴える表情で現れる。エヘヘと言いながら、または背をを丸くしながら小声で、あるいは高らかな笑いで、または甘くニッコリ、さらには無愛想な返事の後のしたり顔などなど様々だ。

すると自分はどんな顔で人の脳裡に現れるのかが気になってくる。その前に果たして浮かんでもらえるかが肝心だろう。

存否にかかわらず他者を思い浮かべる時、多くが笑顔であればその人も自分も幸せなのかもしれない。

少し時間が経ってしまった
今夜の細麺天玉そば。

サツマイモと豚こま
とレンコンの煮物。
テレビで見て作ったらしい。

本日偶々のお客様。

2023年10月19日(木曜日)

今日木曜は仕事休みの日。
いつもより早起きし、本日から始まる「絵付け陶芸三人展」で入館者さんに配る説明資料を慌ただしく作り美術館へと妻に渡した。

同展の初日だが展示と関係なく来られた団体さんや、東京→十日町のご実家を経て樹下美術館へと来られたご夫婦、昭和時代のヨット仲間A氏が寄られ忙しくも楽しい日だった。

わけても東京のご夫婦とは奇遇というほかないいきさつがあった。
詳細な説明には2021年11月19日の当ブログをご覧いただくのが良いのかも知れない。そこでは数年前のNHK放映「日本ぶらり鉄道旅」の大井町線で等々力(とどろき)に住む女性が取り上げられていた。

彼女は壊れた焼き物を修復される人だった。番組ではその作業が放映され、扱われた取っ手が破損したマグカップこそ何あろう齋藤三郎の作品だった。

修復の依頼主は「祖父が美味しそうにビールを飲んでいた器」だと聞いていると紹介されていた。そして本日ご実家の十日町を訪ねた後、樹下美術館に来られたご夫婦こそ、その依頼主さんだった。
陶芸ホールでお茶を飲みながら、お爺様が所有されていたという昭和20年代と考えられる色絵と染附けの湯呑もスマホで見せて頂いた。とても良い作品だった。
それが両方とも金継ぎで補修されている。齋藤さんの器はよく破損した。それだけよく使われたのだ。母も壊しては父に苦い顔をされていたが、仕方がない。

さらにご夫婦の姓から、もしかしたら齋藤三郎と遠縁同士かもしれませんね、という話にもなった。

ところで私の東京の最後の住所は大井町線「尾山台」で、修復は隣駅「等々力」の女性宅で行われている。くだんの齋藤作品は修復のため大井町線を行ったり来たりしたことになり、本日はその持ち主さんが突然お顔をだされ、同線の「緑が丘」のお住まいと仰った。
ああ緑が丘は私が尾山台の前に最も長く住んだ大岡山の隣駅ではないか。

そんなことから本日午後中、緑が丘は蒲田線(昔の目蒲線)だか大井町線だったかなど、忘れかけていた一帯の位置関係を思い出すのに頭が一杯になった。

お二人は裏手の田んぼに出られたり庭を歩かれ、帰り際に齋藤三郎の図録を求められた。
NHK放映後、拙ブログなどもあり、すっかり齋藤三郎ファンになられている様子が伝わり、破損マグカップが取り持った奇縁を何とも有り難く思った。

その後、昔のヨット仲間A氏が来られた。ちょうど残った柿を採ったところで、ベンチに座りスタッフに剥いたもらい茶を飲みながら昔話をした。
熊の話題になり、A氏が「今年は熊が柿を目当てによく里に下りている。県下のある地方では熊が寄るのを防ぐため柿の実を全て取るように言われているらしい」と話した。
夏中続いた暑さで山の食べ物が不足しているなら、そのような手段は本当に必要ではないかと思った。

何かと忙しい日でしたが、以下は庭に咲いている花です。

リュウノウギク。

ホトトギス。

次回はもう少し上手く写した花を出したいと思います。

明日から始まる「絵付け陶芸三人展」の準備をした。

2023年10月18日(水曜日)

本日総出で明日からの「絵付け陶磁器三人展」の展示準備をして終了した。

今年の陶芸ホールは「齋藤三郎 壺展」、「館長の写真展」、「館長の絵画展」、「篠崎正喜展」とめまぐるしく企画展を続けた。展示構想、撮影、告知、広報、搬入搬出などが連続し非常に忙しかった。

年だからもうのんびりするのが普通なら、私の場合、年だからこそ慌ただしくなるのを否めない。慌てるし疲れもするが、何よりも張り合いが前に進ませてくれる。

展示してみると、赤絵の黒岩卓実さん、色絵金銀彩の鈴木秀昭さん、九谷の正木春蔵さん、三人の作品は等しくとても楽しい。それぞれ色が冴えているうえ筆致に緻密、軽快、繊細など三様の個性があり、特異な作風が一貫し観ていて飽きない。

キャプションと共にケースに収まった場内を見ると、力作の迫力と作品の楽しさがホールに満ち、あらためてワクワクした。

展示作業の最後は照明。渡辺電気さんにやってもらっているが高い所の作業はいつも心配で気を揉む。

 

入って直ぐの黒岩卓実さんの大きな赤絵深鉢。肌色の柔らかな地に菊、蝶などが見込みに、独特の動物模様が胴回りに、いずれも速筆で描かれ、添えられる緑に大胆で味わい深い赤が冴える。入って左回りに黒岩作品が続く。

正面に近づくと鈴木秀昭さん作品に変わる。上掲は抹茶茶碗。いずれの器も宇宙や曼荼羅の形象が金・銀・色絵によって驚異的な緻密さで埋め尽くされ、哲学的な雰囲気が漂う、

 

 最後は山代温泉の正木春蔵さん。九谷の伝統と中国や半島の研究を土台として、独特の間と一種飄々とした文様がセンス良く描かれる。かって数回窯を訪ね、食事をご一緒したことがある。

お三人とも様々な雑誌でよく取り上げられ、東京はじめ日本各地の有名店の展示会は常に好評を博している。

陶芸室の18の展示台に38作品を展示しています。
年度末まで本展示を継続いたします。晩秋から初冬へ、日々変わる空を味わいつつどうかお寄りください。

篠崎正喜展が無事終了した ノートの絵。

2023年10月17日(火曜日)

8月17日から始まった篠崎正喜展が本日最終日となり終了した。長いお付き合いをした篠崎さんに10年ぶりに来館して頂き12日には講演会もしてもらった。

才能と汗の結晶である美しい作品は明日の作業で仕舞われてしまう。とても名残惜しいが何時か何らかの形でまた展示してみたいと思った。

入り口からの篠崎展。

 

奥からの篠崎展。

最終日ということもあっていつもよ少し賑やかにして頂いた樹下美術館。長野県から三度目の篠崎展に来られたご夫婦、髙田文化協会60周年行事以来のA氏。皆さまと楽しくお話しているうち車の一年点検をすっかり忘れてしまった。

本日丸テーブルのノートに以下の絵が描かれていたと妻が持って帰りました。

どうすればランチをしながらこんなに生き生きと描けるのでしょう。きっと小さい時から描くのがお好きだったのですね。

時雨ときどき晴れ、ときどき虹、そして紅葉へ、今年も秋らしくなってきました。本日ご来館の皆さま、有り難うございました。

お陰様でゴルフで優勝した 弟との時間。

2023年10月15日(日曜日)

本日日曜日、小雨がちの空の下、サンシャインゴルフクラブで同業14人による今年最後のゴルフがあり、なんと優勝した。簡単な表彰式で最後に優勝者はスピーチをしなければならない。

前回優勝はいつだったか思い出せない。成績がよかったのは皆さま、とりわけ同組の3人のパートナーに恵まれたお陰。来年も仲間に入れてくださいと述べた。実はお陰はほかにも沢山あり、年取って一番前のティーから打てること、ハンディキャップが26もあること、当然ラッキーもある。

とにかく良い事があった時の挨拶は嬉しさを噛みしめながら、あるだけのお陰を挙げるのがマナーだと長年のゴルフから学んだ。ついでに挙げると、普段誘って頂く友人知人のお陰は大切で最後は親のお陰も足さなければならないだろう。
本日参加の皆さま有り難うございました。元気に過ごし是非来年も続けたい。

美しい最終18番ホール。
ちなみに50-46でした。

本日夕刻に南三陸町の弟夫婦が姉妹二人を連れて来て、家で食事を一緒した。

妻手作りのイクラ。牧村の親族の新米に掛けてもフランスパンに載せても美味しかった。

いも煮汁。

 

久し振りの故郷の弟は文化の話をしたいと言った。
日本の自然と太古の地質、多神教と一神教と文化、日本美術と西洋美術の違いの根幹、自然と神、心の本質、本音と建て前、他人の大切さ、自問の大切さ、やれやれという言葉、旨いもの不味いもの、庶民の拠り所と救い、大規模酪農の脆弱性、明治人の立派さetc、もう何から何まで話をした。

私が世の中に不味いものなど無くなったというと、いやいや不味いものはいくらでもある、という1点だけは意見が合わなかった。弟の食へのこだわりが、幼少から今に到るまで変わらずにあるのは全く驚くべきことだ。

ゴルフの後に残っていた足腰の痛みが弟と話をしたらすっかり消えていた。

二人の姪は文字通り匂うように美しく、弟は心配だろう。

良い一日だった。

今年の樹下美術館の柿。

2023年10月14日(土曜日)

樹下美術館の敷地で採れる果物が柿です。まだ幼い木ですが昨年初めて10数個収穫しました。今年は夏まで20個ばかりあったのですが、、暑い盛りにポトリポトリと実が落ち、8個が色づくまで残りました。

 

10月5日、8個のうちの2個。

 

10月9日、1個が鳥に食べられた。

鳥に食べられないうちにと思い、まず2個を獲り、数日家で陽向に起きました。

本日その2個を食べました。

 

パリパリとした歯ごたえのある甘柿。美味しく食べたが昨年より甘みが少なく感じた。
長く続いた異常な高温は柿にも影響したのでしょうか。残った実は今後昼食替わりにサラダとともに美術館で食べようと思います。

「真実は美しい」 面白く有意義だった篠崎正喜氏の講演会。

2023年10月13日(金曜日)

現在樹下美術館で展示中の篠崎正喜作品。独特の美しい色彩と手を抜かない描き込み、旅情とファンジーの画家の講演会が昨日午後終了した。

氏と知り合ったのは植物画を描き始めた頃なので25年ほど前になる。細密に描くことに苦労をしている時ネットで知りメールを交換、東京や横浜でお会いし、こちらにも二度足を運んでもらった。
ご好意に甘えて作品を求めたのが、念願叶いようやくこのたびの展示に到った。

よく晴れた昨日の駐車場。

演題は「生成AIと美術」。
氏は私より少し若いだけなのに美術や思想はじめテクノロジ-、環境や健康などについて深い興味と理解を有されている。AIについては頻回に氏のブログで取り上げられていて、それは瞬く間にChatGPT、生成AIへ、美術との関連へと展開されていた。

場内の様子。

 

講演される篠崎氏。

10年ぶりの氏は一段と個性を磨かれ独自の境地へと進化されたように感じた。当日自らトライし上書きを試みた映像を紹介しながら説明された。

 

生成AIは、丁寧かつ要点を絞ってプロンプト(指示、依頼)すること。一般的になってからまだ日が浅いため、興味さえあればだれでも等しくスタートラインに立てると強調された。

まだ生成AI作品には一種の欠落や錯誤が混じるがフォトショップで自分なりに修正を試みていること、未来とくに事物の劣化や荒廃などの表現が得意なこと、あるいは作品の所有権などにも言及された。

最初の方で、カウボーが荒野で馬をを駆るシーンをA・ワイエス風に描く要求に応えた絵が示された。砂塵舞う躍動的な作品で、なるほどなるほどと感心したがワイエス独特の静謐さは今一だった。

快活に語る氏の姿勢は印象的で、取り組みには「何より楽しむこと」が大切と明言された。

南国の海と島、着物の少女をオーダーした作品。とても気に入っているとコメントされ、鮮やかさは宮崎県ご出身だけある。
※上掲3葉は端の席から撮りましたため画面が歪みました、、、。

生成AIは色々やってみているが全体として「生活感」の希薄さが課題と仰った。

後段には自らの作品の解説と、在りし日の親族とのことを描いた自筆スケッチ、さらに街で出会う人々のスケッチ作品が多数追加された。

颯爽と自転車に乗る美しい脚の娘さんや主に赤羽駅周辺あるいはアメ横や電車内、あるいは横浜で見た人々の作品が供覧された。
アジアや中南米の人々、ダンサー、変なオジサン、美しい店員、部活帰りの女子高生、格闘家、変わったおばさん、風俗嬢、鎌倉の女性などなどが、「きれいでしょ」「可愛いでしょ」「面白いでしょ」と次々紹介された。
出会った場所ではなく帰ってからサッと描くという観察眼と記憶力(印象力?)、なにより筆力にはただただ脱帽。休憩を挟み納得と笑いが絶えない貴重な2時間だった。

振り返れば後段の亡き家族や街の人々のスケッチはただの自己紹介や作品解説では無かったのではないか。実は無双「生成AI」がなし得ていない、あるいはその先にある、またはアンチテーゼとしての「様々に匂いのある生活感あふれる作品」の提案だったのかもしれないとふと思った。皆さまは如何だったでしょうか。

終えて近くの「サブリーユ」で食事を一緒した。そこでも話尽きなかった。氏はかなり前から老荘思想、特に莊子が良いと傾倒されている。他方、量子力学への興味から下世話な世間話などへも広がった。
あああのように様々な範疇への興味と洞察、そして描くことへの情熱が混然一体となって氏独自の美しい作品へと昇華されているのでは、と食事を一緒した方が仰った。まったくその通りだと思った。

幼少から描くことが好きで、多くのパトロンが付いた氏の作品。それでも描くことより売ることのほうが遙かに難しかったという。

「真実は美しい」という氏の言葉が心に響いた日だった。

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