齋藤三郎(陶齋)
7月18日(木曜日)から齋藤三郎・齋藤尚明、両氏の親子展。
今年夏の主要な催事、「齋藤三郎・齋藤尚明親子展」が近づいて来まし
た。
この度は親子ご両人ともども白磁をメインにした展示です。
お盆を挟んだ7月18日から8月27日までの40日。
両氏の芸術への情熱を思い、親子の愛情漂う会場を想像しています。
また会期中の毎土曜日午後、両陶齋のお道具を入れた薄茶点前のお茶席
を予定していますので、どうかお楽しみ下さい。
皆様にお知らせすべく現在下記のような書面で告知作業を進めている所です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・記・・・・・・・・・・・・・・・・・・
齋藤三郎・齋藤尚明親子陶芸展
-受け継がれる格調-
このたび樹下美術館では故齋藤三郎氏(初代陶齋)と齋藤尚明氏(二代陶齋)
の親子陶芸展を以下のように催します。夏の日に清々しい白磁メインの会場
で、父子の魂が一つになる幸福な展示をご高覧頂きたく、謹んでご案内申し上
げます。
●日時:令和元年7月18日(木曜日)~8月27日(火曜日)
午前10時~午後5時
●会場:樹下美術館 949-3103上越市頸城区城野腰451番地
電話025-530-4155 入場料お一人様300円
※会期中、毎土曜日午後のお茶席
7月20日、27日。8月3日、10日、17日、24日の各土曜日、樹下美術館茶室
にて午後1時からと2時半からの2回、薄茶点前のお茶席を設けます。主に両陶
齋のお道具を用い、1席5~7名様で、会費はお一人様1200円です。ご希望の
方は出来れば予めお電話でお申し込み下さい。会費は当日樹下美術館の窓口で
お願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一昨日樹下美術館にお見えになった齋藤尚明、二代陶齋氏はとてもお元気でした。
新たに加わった齋藤三郎(陶齋)の湯飲み茶碗と陶齋の美学。
最近道具屋さんから齋藤三郎(陶齋)の湯飲みが三点入った。
初めて見る新鮮な風情漂う絵付けが施され、如何にも美味しいお茶が飲めそうな器だった。
枝葉を描き、ほの赤い辰砂で背景を塗りつぶし、色彩配分も抜群。
三郎は花にこだわらず、よく葉だけを文様とした。
花は皆様と茶とお菓子、茶碗は脇役という美学が漂う。
鉄絵の麦藁手(むぎわらで)湯飲み。縦に線を画く手法を麦藁手と称している。
やはり渋い器は脇役に徹し、主役は茶菓子に加えお話ということでは。
蓮の葉が爽やかに画かれている。
ここでも花を画かない。陶齋なら葉に比べ、花はずっと簡単なはず。
どうぞ花は想像して下さい、というセンス。渋好み、通人らしい感覚。
蓮の葉の裏手に橋が描かれていた。
橋によって湯飲みに生活が入ってくる。
12もの面取りが施された力作。
お洒落で粋な三郎の器。壺や皿の大作から食器、茶道具まで何でも制作した陶齋。
湯飲み一つとっても何万個単位で作ったかも、と仰るのはご子息・二代陶齋尚明氏のお話。
樹下美術館にも5,60点はあろうと思われます。以下2017年発行の当館図録に収載した湯飲みの一部をご紹介しました。
樹下美術館のカフェではご注文が終わった後のお時間に陶齋、二代陶齋の湯飲みでお番茶をサービスさせて頂いています。
昨夜、陶齋の陶板額の詩歌が万葉集だと分かった。
長く樹下美術館にあって、現在展示中の齋藤三郎(陶齋)の辰砂陶板額。
民家ともくもくたる雲の空には詩が漢字で力強く書かれている。
鉄絵の具の焦げ茶、呉須の青、辰砂の赤い地色も良く、文字に力こもった陶齋の優品の一つであろう。
当館における氏の書に寒山詩、王維があり、焼き物に千字文が引用され、良寛の漢詩も数点見られるので、陶齋の文といえば漢詩しか浮かばなくなっていた。
だが件の作品の文字(詩文)はどうしても読み下せない。
作品のテーマゆえ、分からなければ持ち主として、館主として失格であろう。
その昔ある骨董店主に読みを尋ねたが、読めません、と言われたままになっていた。
このたび熱心なK夫婦に促され、展示中の陶板額の前で、あらためて一緒に読んでみた。
どう眺めても、読めるのはせいぜい天、近、光、響、見、恐、不などで、他に者?悲?がせいぜい。
特に天、響 悲に続く文字が分からず、恐には不可が続くのか?など判然とせず、結局ギブアップだった。
読める字だけ拾っているとぼんやり意味が浮かび、読めなかった字が埋まることがある。
結局それも叶わなかった。
奥様の父上は古文書が読める。それで作品を撮って父に聴いてみる、と仰って携帯を向けられた。
あるいは、幾つかの文字を並べて該当する漢詩が出るか、ネット検索してみたいとも仰った。
昨夜のこと、お別れの食事会から帰ると詩文のことを思い出し、パソコンを点け、「漢詩 天、光、響」を打ったり「詩 天 光 響 恐」を試した。
頭は冴えていたが、いずれも期待した応答はない。
待てよ、者→「は」あるいは「ば」で、助詞では?
これは漢詩ではないかもしれない。
ためしに「天 光 響 恐」だけで打ってみた。
すると驚いた事に、この文字を含んだ万葉集が一首、すらりと現れた!
「天雲 近光而 響神之 見者恐 不見者悲毛」 が原典で、詠み人知らずだった。
“天雲(あまぐも)に 近く光りて 鳴る神の 見れば恐し(畏し) 見ねば悲しも”
五七五七七のちゃんとした短歌だ。
意味として、
天空の雲に光る稲妻は、見るのは恐ろしい鳴る神か、と言って見なければまたせつない
恋の歌として、
高みにおられるあなた様は天雲で鳴る雷光のようで、逢うには畏れ多く 逢わなければ悲しいのです。
陶板を原典に照らせば、「天(あま)」の下の字は“雲”であり、「光」の後に“りて”と充て、「響」は鳴ると読み、「神」が続いていたことになる。
原典に「神之(かみの)」とあるが、陶板に之が見当たらない。
「見者恐」は“見るはおそろし”で、以下「不見者悲毛」と続き、“見ねば悲しも”と読み下すことが分かった。
「悲」の下には雲の輪郭線に紛れて「毛(も)」が書かれていたことになる。
言われればそうかな、と思うものの、原典を知らなければお手上げで、このたびはインターネット様々だった。
昭和30年前後に我が家にやって来た陶板は、ちゃんと読まれる事も無く、布にくるまれるなどしてどこかの隅で窮屈に過ごしてきた。
それが立派な万葉集を戴いていたとは、本当に気の毒をしたと思う。
調べを進めると、棟方志功の扇面に鷺(さぎ)の絵とともにこの一首が書かれていることも分かった。
詠み人知らずとはいえ、何と気宇の大きい恋歌だろう。
万葉集とは、陶齋や志功の何という教養。
昔人の創造性と感性、知識と表現に比して、今日自分の非力と貧しさは如何ともしがたい。
それらは今後の課題として、館内で鳩首し作品を判じてみたK夫妻はどのような結論に達しただろう。
近日中にお会い出来るようだが、万葉集でしたね、と仰るにちがいなく、楽しみだ。
読みをプリントして、作品に添えようと考えています。
2019年3月14日、仕度整った日。
樹下美術館が80日の冬期休館を終えて、明日13年目の開館日を迎える。小規模な個人施設なので華やかなことは無理だが、今年は上越市立小林古径記念美術館のご協力を得て同館が収蔵する倉石隆の油彩を特別展「倉石隆 油彩&挿絵小品」としてご供覧出来る幸運に恵まれた。
もとより狭小なスペースのため、油彩は二ヶ月毎に三回展示替えを行い、計8点を架けることになった。公私の施設が協力し合い、互いの作品を活かすことは地域にとって意義深いことであり、古径記念美術館には感謝を禁じ得ない。機会に恵まれた折には、是非とも当館収蔵品の貸し出しに協力したい。
また今夏には二代陶齋、齋藤尚明氏のご協力で、約一ヶ月半の「陶齋親子展」が開催の運びとなった。白磁、青磁メインの涼やかな展示が期待される。
本日絵画および陶芸ホールは以下のように仕度が出来ました。
絵画ホールの「倉石隆の油彩&挿絵小品」。正面の三点が小林古径記念美術館収蔵作品。
以下にその三点を大きくしました。
スペースの関係で肩を寄せ合うように架けさせて頂いてます。いずれも倉石隆の各年代を代表する力作。
これらを囲むように同氏によるスクラッチボードの小さな挿絵原画6点を架けました。
陶芸ホールは「陶齋の辰砂」です。
入ってすぐ正面のケースに「辰砂掻き落とし牡丹文大皿」を展示しました。
幅37センチの大皿。昭和50年陶齋は二回目の登り窯を築きましたが、その時の初窯作品です、
正面のテーブルは暖かな色調の鎬(しのぎ)文水指と壺(むこう)。
ほの赤く、磨かれた形の水指。
樹下美術館収蔵の作品から辰砂を18作品、29ピースを展示しました。
以下は入館者様にお出しする予定の展示案内です。
三月になって続いた暖かかった陽気が一転、この数日非常に強い寒さが戻りました。昨日などは猛烈な風とともにみぞれが降りました。
本日夕刻はさすがに風が止み、きれいな夕焼け雲がみられ、明日は晴れる予報です。
今年も皆様には年末までお世話になりますが、どうか宜しくお願い申し上げます。
このように開館できますことを一同喜び、この先を励みたいと思います。
今夏の陶芸特別展は「三郎・尚明 陶齋親子展」
今年7月18日(木曜日)~8月27日(火曜日)は陶芸特別展で、齋藤三郎と齋藤尚明の陶齋親子展を開催致します。
※開始日が一週間早まり7月18日になりました。絵画の搬出搬入と重なるため、変更いたしました。
樹下美術館初めての親子展は白磁をメインに青磁をを交えて展示致します。
先代陶齋(齋藤三郎)は絵付けの人のイメージがありますが、白磁と青磁にも優れた作品を残されました。さらに尚明氏(二代陶齋)は長年それらと熱心に取り組まれています。鉄釉の高温還元焼成は決して容易な技ではありません。どうか親子ともどもの懸命かつ爽やかな作品をご高覧下さい。
以下は展示予定の一部です。お二人併せて25~30点ほどになろうと考えています。
夏の陶芸ホールは、きっと涼やかな眺めになることでしょう。
親子お二人の作品を二つ一緒に並べるケースも用意する予定です。
今年の陶芸展示は「陶齋の辰砂(しんしゃ)」。
今年の陶芸「陶齋の辰砂」のご紹介です。
辰砂は銅を主原料にした釉薬(うわぐすり)で赤色系の発色をします。但し焼く温度や窯の酸素の管理で容易に黒色や緑色に変化し、あるいは飛んで行ってしまうなど、大変難しい技法といわれています。
一般的に濃厚な色として用いられていますが、陶齋の辰砂はやや淡く、時には濃淡があり、穏やかな表情をしています。
辰砂に限った展示は今回が初めてで、作品数が足りるようになりましたので、今年は常設展示として取り上げました。
以下その一部をご紹介致します。
辰砂陶板額(しんしゃとうばんがく)。亡き父が残しました。
雲が湧く空に詩文が書かれていますが、いまだに読めません。
辰砂彫椿文花瓶(しんしゃほりぼたんもんつぼ)。
妹の形見です。
辰砂窓絵椿文壺(しんしゃまどえつばきもんつぼ)。
美術館に来て三年目ほど。思い切った窓にゆったりと雪椿です。
地模様にも力がこもった大らかな作品です。
明るく上がった辰砂の水指。左が牡丹文で、右は山帰来(さんきらい:さるとりいばら)文です。
明るくおっとりした形が親しめます。
食器などを含め20点の合計30ピースの展示を予定しています、どうかお楽しみください。
陶齋(齋藤三郎)は髙田開窯の当初、辰砂は難しいと漏らしていたといいます。そのため当時のお弟子だった志賀茂重氏を京都の河合寛次郎の許へ派遣し、研究の緒に就きました。志賀氏の旅費、滞在費は棟方志功の支援を頼んだと聞きました。
齋藤尚明さんの来訪 来夏は親子展。
昨日の晴天と打って変わり、本日終日風雨に見舞わ
れた日曜日。
過日の齋藤尚明展で求めた青磁の水指の箱が出来上
がり、作者ご本人が作品を持参された。
青磁面取り水指。展示場にあった時よりもさらに生き生
きとして本日現れた。
カフェの尚明氏(二代陶齋)。先代と同じく博覧強記の
人で、話はいくら時間があっても尽きない。
来年のことになりますが、夏に先代との親子展を行うこ
とになりました。
父上は辰砂(うす赤紫)、尚明氏は白磁と青磁にして、館
内スッキリと爽やかに展示したいと思います。
またその期間中の毎日曜日(例)、当館の茶室で本日の水
指と父上の花入れなどを用いたお茶席を設けることを予定
しています。
このようなことは私たちの楽しみであり励みでもあります。
展示中の齋藤三郎作品から竹の三作品。
樹下美術館今年の展示はあと一ヶ月半を残すばかり
となりました。
今年の展示を振り返りながらあらためて眺めてみた
いと思います。
今年の齋藤三郎(陶齋)展示は染附(そめつけ)で
す。
染附ですから作品は全て青(藍)で描かれています。
藍はコバルトを主成分とする呉須(ごす)という顔
料が用いられます。
焼きの温度、時間、送風などの条件によって風合い
が異なることも一つの見所ではないでしょうか。
齋藤三郎(陶齋)は中国産の唐呉須で描いたと聞き
ました。
去る日は齋藤三郎のごく初期作品である昭和12~
13年当時の二つの菓子器について以下のように記
しました。
齋藤三郎(陶齋)の二つの菓子器その1
齋藤三郎(陶齋)の二つの菓子器その2
二作品とも竹林文様でしたが、この度その続きとし
て以下いずれも竹に関する染附作品を記します。
染附(そめつけ)竹文徳利。(上越市髙田における
比較的日が浅い時期の作品。笹を大きくややラフに
描き、くつろいだ気配が感じられます。
↑染附竹文水指(そめつけたけもんみずさし)。
昭和30年代作。竹と笹の輪郭を最初に描き、余白を
くまなく塗りつぶしています。
陶芸では輪郭を描くことを骨書(こつがき)、その中
また周囲の地を塗りつぶすのをダミと言います。
この器は丁寧に描かれた笹と竹の幹を余白として残し、
空間(地)をダミとしてあまねく塗っています。
一般に骨描きは細く固い筆を、ダミは太く柔らかい筆が
用いられました。
当作品は骨書きダミともスピード感があり、筆跡(タッ
チ)が味として読み取れ、それは作品の動きや竹林の
風を感じさせています。
染附の藍が十分に生かされた上品な力作ではないでしょ
うか。
昨年2月に美術屋さんから来た作品でした。
没後36年、いまだに見た事もないような優れた作品と出
合えるとはつくづく驚かされます。
4㎝四方の染附香合。共箱に昭和13年橡三郎作とありまし
た。文様は恩師・富本憲吉の代表的な図柄の一つである
「竹林月夜」を用いています。
三郎の生家、新潟県栃尾(現長岡市)は当時橡(とち)尾
と記していたようです。それで橡三郎と号したのでしょう。
昨年4月、新潟市に於ける裏千家お家元の茶席でこの香合
を使いました折、お褒め頂きました。
さて先回から続いた作品はいずれも竹で、比較的若い時代
の作品によく見られるようでした。
これには多くの笹や竹林を描いた師の影響が濃く現れてい
るものと想像されます。
中国に於ける歳寒三友(松、竹、梅)、四君子(竹、梅、蘭、
菊)と古来から尊ばれ、寒さに負けず初々しく、強くしなや
かな竹そして竹林。
それはまた若き陶齋を鼓舞した大切なモチーフの一つだった
にちがいありません。
齋藤三郎(陶齋)の二つの菓子器その2、壽山窯作品との出会い。
前回記述しましたように、若き齋藤三郎は近藤悠三の
後富本憲吉へと師事した後、昭和12~13年に京都
で独自に制作します。
その京都時代の昭和13年のある時期に、乞われて兵
庫県は宝塚市の雲雀丘(ひばりがおか)にある壽山窯
(じゅざんがま)に招かれました。
壽山窯はサントリーの創業者・鳥井信次郎氏が自邸庭
に所有した製陶所でした。当時サントリーは壽屋酒造
の時代であり、信次郎自身、壽山と号していたといい
ます。
鳥井信次郎は2014年9月からの連続テレビドラマ「マ
ッサン」で“大将”と称され親しまれた鴨居欣次郎役の
モデルでもあります。
壽山窯には齋藤三郎の師であった近藤悠三はじめ何人
かの陶芸家が所属し、ほかに画家や書家も加わり全体
は壽山荘と称し、一種文化村の趣きを有していたようで
す。
さて前置きはこのくらいにして、樹下美術館の開館に
あたり齋藤三郎の壽山窯時代の作品と出合いたい、と
長く念願していました。
実は上越の陶齋コレクターから壽山窯の色絵作品を譲
り受けていました。壽山窯のサインは陶齋風と言えな
くもなかったのですが、図柄が中国風であり、作家サ
インや印影もなく、後に違う作者と判明しました。
こうなるとますまず同所の齋藤作品への思いがつの
ります。
ところがある日のネット検索で染附の壽山窯作品が現
れました。
サイトには染附竹林菓子器とあり、鶴の文様が描かれ
ていると説明されていました。
しかし壽山窯にはほかに陶芸家が居ますので、齋藤
作品の可否は判りません。三郎はかっての師たちの
影響を忠実に受けています。しかも同窯には師の一人
後に人間国宝となる染附の人・近藤悠三がいました。
制作者は近藤悠三なのだろうか?
価格は5000円という廉価でした。いずれにしても手に
取ってみたいと思い、早々に購入手続きを行いました。
届いた器の箱。手垢、汚れなどは無く、文字も書いたばか
りのように歴々としていました。長く仕舞われたままだっ
たのでしょうか。
表書きの文字は三郎を思わせますが、それだけでは本人作
とはいえません。
箱の裏書き末尾に壽山窯。そこに「斉」の印影があるでは
ありませんか!前回の染附菓子器にあったものと同じです。
齋藤三郎は壽山窯の制作でも自らの印影を残し、我が作と
して伝えようとしていたのです。
出て来た染附 竹林菓子器。底と口に呉須(藍色顔料)で輪
を描いています。出品者が言うように確かに鶴が飛翔してい
るように見えなくもありませんが、“雪持ち笹”が一層強調さ
れていました。
裏面の記銘は壽山窯。全体のあしらいは前回の菓子器と似
ています。
5000円の価格から数物(かずもの)として多く制作された
品の一つだったかも知れません。はたして売り主は鳥井信次
郎と壽山窯のことを承知していたのでしょうか。
いずれにしましても、この器は樹下美術館に於いて唯一齋藤
三郎の壽山窯作品になりました。
ちなみに、以下に昨日ご紹介した器の箱に記載された文字
を比べてみました。
「菓子器」の「器」は双方非常に似通っています。
左:前記した昭和12~13年、独立時代の「染附菓子器」。
右:昭和13~15年、壽山窯時代の「染附 竹林菓子器」の
もの。
二つの菓子器を並べました(サイズは共に21㎝)。京都と
宝塚市、制作場所と状況が異なる20才代半ばの三郎作品が
、70年近く経って樹下美術館で出合う。
出来事は単なる蒐集者の満悦ではなく、作品を介して若き齋
藤三郎その人、あるいはその命と出合えた喜びが大きいので
す。
ある人の作品を蒐集する事は、作品とともに作者を“愛する”
ことにほかなりません。
さすればその若き日の作品を見たいと熱望することも世間の
通念と同じではないでしょうか。
現在二つの器は「齋藤三郎の染め付け」として展示中ですので、
どうかご覧下さい。
この先も展示物のエピソードなどをご紹介してみます。
このたび二つの菓子器はとても長くなりました。
齋藤三郎(陶齋)の二つの菓子器その1、最も古い作品との出会い。
10月は半ばを過ぎようとしており樹下美術館ことしの
開館は残すところニケ月余となりました。
そこでおさらいではありませんが、展示中の作品につい
てあらためて若干のエピソードなどを記してみたいと思
います。
このたびは現在展示中の齋藤三郎の染附作品から菓子
器(鉢)2点を取り上げました。
いずれも染附(そめつけ:藍色の器)でやや不思議な図
柄が描かれ、初めて観た時は何の模様(文)か分かりま
せんでした。
本日は一点目をご紹介致します。
↑2007年6月樹下美術館開館のほぼ半年前,、とある美術店
で出合った菓子器が入った箱の外観。
真田紐は十字に交わる四方結びが普通だが、横一文字の結
びは如何にも簡素。
↑箱の表に書かれた染附菓子器の記銘。
箱はやや古色が付き、書き付けも薄くなっていました。
↑箱の蓋裏。昭和拾弐年(12年)秋 齋三郎 造 斎の印影。
思ってもみなかった昭和12年!それは三郎が京都の近藤
悠三に、さらに東京時代の富本憲吉にと足かけ5年の師事
の後、京都で独自に制作した貴重な年代に相当していまし
た。
(上記二人の師は後に人間国宝となります)
店の主は“たつけも無い(普通の)”染附と思っていたようで
した。ならばと私は必死に平静を装い、懐具合を考えて値切
りを持ちかけ、言い値をさらに安くしてもらいました。
↑箱の中は焼き上がりが素晴らしい爽やかな染附鉢。
青みを放つほどの白い地に、青と鉄の釉薬でフチ取りして
祥瑞(しょんずい)風に仕立て、格を上げていました。
この不可思議な文様は何なのでしょう。すぐに齋藤尚明氏
(二代陶齋)を訪ね、“雪持ち笹”と教えて頂きました。
笹の上に雪が乗っている意匠だったのです。
↑器の裏面。高台内に斉の署名、胴には雪持ち笹があしら
われている。散らしてあるのは雪でしょうか。
この慎ましくも美しい器の全体をあらためて観ますと、栃
尾町(現長岡市)出身の若き陶齋が京都に於ける独立制作
で、文様に込めた雪国の故郷に対する思いが蘇り、胸が熱
くなりました。
それまで当方で最も古い作品は昭和13年作の四角い染附
香合でしたので、この鉢はさらに古い時代の(24才の若き
日の)記念碑的な品になりました。
突然の貴重な作品との出合は、樹下美術館開館を半年後の
6月に控え、作品は探せばまだある、という思いを強くし、
寒さの中を新潟や長岡、糸魚川などへも足を運び探索を行
いました。
幾つかの優品と出合う一方、インターネットで思いがけない
染附と遭遇する事になります。
今後また続きを記載させて頂きます。
- 花頭窓、二十三夜塔、庚申塔、社寺
- 樹下だより
- 齋藤三郎(陶齋)
- 倉石隆
- 小山作之助・夏は来ぬ
- 聴老(お年寄り&昔の話)
- 医療・保健・福祉・新型コロナウイルス
- 花鳥・庭・生き物
- 空・海・気象
- 頸城野点景
- ほくほく線電車&乗り物
- 社会・政治・環境
- 明け暮れ 我が家 お出かけ
- 文化・美術・音楽・本・映画・スポーツ
- 食・飲・茶・器
- 拙(歌、句、文)
- こども
- 館長の作品。
- ゴルフ場でトマトジュースの汚れを口を使って落としてみた。
- 晩秋好天の日のゴルフ 朝日池のコハクチョウ。
- かって認知症だった人、晩年の「ありがとう」は「すき」と書かれた。
- 妙高市はいもり池の近く「ギャラリー峨々」を訪ねた。樹下美術館も紅葉。
- 再び良寛椿の苗。
- 1本の木にキンカンとカラタチの実が。
- 秋晴れの日のゴルフ。
- カフェのノート、スケッチブックの絵、ブログ展その3。
- 本日ジョケラさん初日。
- 明日からジョケラさんの展示会 高宮あけみ展のご来館有り難うございました。
- 別れ。
- カフェのノート、スケッチブックの絵、ブログ展その2。
- 講演会「良寛さんに学ぶ」が無事終了した。
- カフェのノート、スケッチブックの絵、ブログ展その1。
- 来たる11月7日からラッセル・ジョケラさんの展示会 晩秋の花 近隣のコハクチョウ
- 先週末の種々。
- 高田高等学校創立150周年の秋 いたくら桜園 近隣の秋。
- 「ラッセル・ジョケラ木工展」 可愛いお子さんとおじいちゃん。
- 本日今年最後の同業ゴルフ。
- 今夜のコンサート カッチーニの「アヴェ・マリア」。
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