樹下だより

小島正芳先生と発行予定の著書「良寛の生涯と芸術」 竹。

2023年12月10日(日曜日)

二日続きの晴天のあとの本日はさすがに小雨模様。
されども比較的温かだった。
今年の樹下美術館は余すところあと5日となった。気のせいか今年ほど終了間近となってお客様が多くお見えになる年は珍しいのではないか。

そんな本日新潟市から良寛研究家の小島正芳先生が顔を出された。先生は来年早々の出版予定である著書「良寛の生涯と芸術」の表紙見本のプリントを持参された。500ページに及ぶ大著だ。

「良寛の生涯と芸術」の表紙見本。
2024年1月 考古堂発行予定。

背表紙に「良寛研究の集大成」とされているのが→「良寛研究の新発見紹介」と直されている。集大成ではお終いとなり、意にそぐわないこと、さらに最終校の段で新たな事実が見つかったので追加し間に合ったとニコニコされた。

名や地位へのこだわり無く、お好きな良寛研究に足を使い汗して長く探求された貴重な一冊。
先生のことだから、上から目線の堅い書物ではなく読みやすい、もしかしたらどこから読んでも面白い本になっているのではと、楽しい期待をさせて頂いた。

来年になったら倉敷市に行き、美術館や瀬戸内とともに良寛さんが修行した備中玉島の円通寺を訪ねる予定がある。繰り返し円通寺を訪ねられている小島先生から色々教えて頂いた。

円通寺から海が見える事も知った。良寛さんの故郷出雲崎も海と佐渡島が見える。玉島で10年におよぶ孤独で厳しい修行中、師は海を目にしては郷里を思い慰められたことだろう。

ところで円通寺境内に竹藪があり、小島先生が仰るには“筍や竹は中が空洞で「空や無」を表している。そのうえ、ふしがあることで節度、さらに重圧を跳ね返すしなりを有する事などから禅の修行で着目される植物”とお話された。

齋藤三郎作「染め附け竹文水指」

また同寺に良寛堂ほか師の立像や詩碑があり、岡山県で「聖良寛」と呼ばれ、さらに同県の三大茶会の一つに「良寛茶会」があるなど良寛さんは非常に重んじられているという。
とても嬉しい事で、瀬戸内の陽光と円通寺の茅葺きの佇まいが見られる事を今から楽しみにしている。

本日お越しの皆様まことに有り難うございました。

久し振りのSPレコード。

2023年12月9日(土曜日)

冬に希な二日続きの晴天。樹下美術館の今年開館が1週間を残すことになり色々な方に寄って頂いた。
A氏が久し振りにSPレコードを持参され居あわせたお客さんたちと聴いた。

あらためて平和を祈ろうと、初めに鐘のテーマで、エディット・ピアフの「谷間に三つの鐘が鳴る」と藤山一郎の「長崎の鐘」を掛けた。
最初の曲は人生の節目である誕生、結婚、死に際して谷間に響く三度の鐘を歌っている。三回目の鐘が戦死で無い事を祈った。

「長崎の鐘」は長崎市で被爆し、妻を失いながら被災者の治療に専念、自らも亡くなられ医学者への鎮魂と長崎市民の希望を繋ぐ歌。


昭和24年発売レコード「長崎の鐘」
藤山一郎の歌。

私の年代では知らない人がいない歌の一つ。
私自身昭和43年、医療に踏み出した年、九州を一州するきな団体旅行の医療班バイトとして同行した時、長崎市でバスガイドさんが歌うのを聴いた。
歌は昭和26年の第一回紅白で大トリとして藤山氏が歌い、その後昭和56年まで三回紅白で絵歌われたらしい。

以下は本日かかったレコードの一枚、D・リパッティによるショパンのワルツから。
リパッティはなかなかのダンディ。


本日のSPレコードから
ショパン、ワルツ10番。

黒い帽子が似合うA氏が羨ましい。

慌ただしい日にご来館頂いた皆さま、代議士のUさん、有り難うございました。良い一日でした。

好天の日 「MY Foolish Heart」 明日明後日には晴れ間も。

2023年12月7日(木曜日)

晴れても一日、しばしば半日のいま時。本日の空は荒れたが何かと名残を惜しむ来館者さんたちが寄って下さった。

午後皆さんとお会いして、田んぼに白鳥を探しに行ったが一羽の影も無く、荒れた雲が光芒を引きながら移動するばかりだった。

強風区間のためこの日もほくほく線はのろのろと進んでいった。

戻ると静かになったカフェの窓からアラレで白くなった庭。まだ初雪ではない。

日頃の心を顧みて「MY Foolish Heart(愚かなりし我が心)」です。


1949年の映画主題歌の後年の録音。
原作は「ライ麦畑でつかまえて」

明日、明後日と温かい日射しが現れる模様、エナガや白鳥が撮れれば幸運。

夕刻から同業者ゴルフ会の忘年会があった。たかだか15年前のこの月には10回もの忘年会があった。時代は移り忘年会も古くなったのでは。

東京、神奈川からのお客様 旧師団長宿舎 落ち葉の大潟水と森公園 薄茶点前で エゴンシーレ・琳派風の茶碗 。

2023年12月4日(月曜日)

昨日日曜日も雨降りで、昼前に神奈川県から美大出のご夫婦とその友人が新幹線で見えた。出迎えてから上越市内大町の旧師団長官舎のレストラン「エリス」でランチをご一緒した。

館内は一段ときれいになり、各地から選んだ旬の食材を丁寧にあしらった料理を食べた。

いつ雪が降ってもおかしくない
初冬の館。

 上越市とは思われない
麗しい館内。

磨かれたグラスは良いレストランの証し。

筒石のイカと金柑の料理

 

長崎のスマガツオと黒姫大根の料理。

齋藤尚明さんの蓋物の器が
嬉しい佐渡サーモンと
ル・レクチェの料理。

メリハリが効いた美味しい料理の数々。明治時代の建物で時空を越えた贅沢な時間を過ごした。

三人の宿は眼下に冬の日本海が荒れ狂うホテルハマナス。客人は「凄いなあ」と歓声をを上げた。冬の日本海の波濤は貴重な観光資源だと思う。

一夜明け、本日日曜日昼に「絵付け陶芸三人展」をご一緒した。黒岩卓実さんの軽やかで壮快な赤絵、鈴木秀昭さんの凝縮された宇宙、正木春蔵さんの慎ましい美意識など共感し合い楽しく眺めた。

それから腹ごなしに大潟水と森公園を歩いた。

公園の落ち葉と足許。

帰ってから茶室で妻が点前して薄茶を飲んだ。

藤村正員の「雪聲」の軸。

展示中の鈴木秀昭作
「色絵金銀彩天空茶碗」。
器は大きく十分濃茶も行けそう。

上掲の抹茶茶碗をご覧になった本日のお客さんは「エゴン・シーレ」のようだと仰った。
その前にある方が尾形光琳の「紅梅白梅図屏風」のようだと仰っていた。
いずれもその通りの頼もしい感想であり、ずるい私は「宇宙琳派」と、良いとこ取りをさせてもらうことにした。

雨が小降りになって ピクルス 柿崎海岸 夕暮れの潟町駅。

2023年12月2日(土曜日)

何日も雨降りが続いていたが午後から小降りになった。日ごと気温が下がり雨も冷たくなってくる。本日午後車が示した気温は6度だった。外出すると頬の冷たさが冬のそれに変わっていた。

午後は美術館に寄ってから柿崎海岸を歩いた。

美術館の厨房で鮮やかで美味しそうな食材を見た。ピクルスの下ごしらえだった。以前は妻の仕事だったが今はみなが作る。

大きくて赤いブイが上がっていた。漁網を吊すものか。

かって浮かんでいた海を見ている。
空は今どきの鉛色。

荒れた直後のためシーグラスが上がっていた。

ありきたりの青色が殆ど。
かって僅かだが赤や黄色も
あった。

帰路、夕暮れの潟町駅
学生時代までお世話になった。

潟町駅は小さな御手洗池に接している。小学時代、釣り竿をもって正面線路側の土手から釣り糸をたれた。釣り糸、ウキ、釣り針、重りなどは近くの丸八さんでよく買った。
餌のミミズは家の排泄溝の脇か近所の豚小屋の周囲を掘って採った。
釣り場の土手は機関車の石炭がらの捨て場だった。土手は急で下手するとずるずる池に向かって足元が崩れるので用心しなくてはいけなかった。

深いと言われた池の向かって右には杭と板をあしらった場所があり、かって中学校の水泳部が練習場にしていたと聞いた。
いま池の真ん中に蓮が咲くのをみるとそれほど深くはなかったようだが、子供の頃は「底なし」と言われて怖かった。

11月末日、木村茶道美術館の皆さま。

2023年11月30日(木曜日)

今日で11月が終わる。早い遅いは言うまいと思うけれどもやはり早い。今年も樹下美術館は12月15日で終わり、冬休みに入る。

本日午後柏崎市の木村茶道美術館からスタッフの皆さま6名が寄って下さった。同美術館は今日が今年度の最終日で、別の組が本日分を担当されているとお聞きした。

私ごとだが、昭和62年だったか、あるお茶人と同館を訪ね、その人が所作よく茶を服する様子に魅せられてお茶を習い始めたきさつがある。茶道の新米でも実践に木村茶道美術館は全くもって絶好、いやそれ以上はるかに意義ある場所で、何度も通うようになった。

同美術館茶室ではビギナーも未経験の者にも丁寧な説明とともに、見どころある書画から茶器、茶碗、菓子器、釜はじめ茶杓(ちゃしゃく)や香合などにいたるまで一級品の茶道具を揃えてお茶を点てて下さる。

湯が沸く音、注がれる湯水や茶の音、あるいは動作の衣擦れや呼吸などをも耳にして茶が点てらる時間に身を任せる。そしてお菓子を食べ心込められた熱いお茶を、世と我が身の清濁を併せ、ある意味万感こめて服する。

時も味わいもほどよく過ぎる貴重な時間、それがお茶というものではないだろうか。

本日は冷たい雨がしっかり降った。

知人友人からのクリスマスリースと
クリスマスフィギュア。

本日ご来館の一同は「一年間、やはり疲れました」と仰り、皆さまと一緒に和気藹々のひとときを過ごさせてもらった。
本日ご来館の皆さま誠に有り難うございました。

新潟市「にむらや菓子舗」で茶話会。

2023年11月23日(木曜日)

良寛研究家で全国良寛会会長をされている小島正芳先生から新潟市は寺尾の「にむらや菓子舗」において、良寛さんと齋藤三郎の作品を中心にして集う「良寛茶話会」の知らせが届いていた。

「晩秋のひと時  良寛様をしのんで 一碗差し上げたく存じます」と知らされていた。

世の中は便利で、初めて伺う新潟市寺尾の店もナビが親切に案内してくれる。午後1時の席に丁度良く着いた。

お店と会場の間の坪庭。

掛け物の図。岡山県玉島(現倉敷市)円通寺に向かう国仙和尚と良寛さんの図。右下に描かれた和尚に従う良寛さんが初々しい。

 

掛け物の書は良寛さんの扇面。端整な和歌「王我所轉(わがそでは)」に添えられた成書の出典ページ。あふれる悲しみにも品格。良寛に現れる無二の品格は壮絶過酷な人生と修行で到達した境地であろう。

齋藤三郎の秋草文の鉄絵水指。蓋を幾分沈ませ耳まで付いた何とも良い寸法。初めて目にする形状だった。
晩秋の虹のように華やかな色の輪を重ねた蓋置き。おっとりした形状の椿の香合も愛らしかった。

お茶会ではなく「茶話会」としたところが和やかだった。
10人は座れそうな大きなテーブルを6人で囲んだ。テーブルの真ん中に「船板」が置かれ、良寛さんが好きだったという石榴(ざくろ)が七個盛られていた。
海中で洗いざらしになった板が「何でも引き受けてくれそう」で欲しくて仕方無かった。

 

初めに出された菊湯。

爽やかなな甘み栗金団。

 

三浦小平二の青磁のお茶碗で飲ませてもらった。滑らかな泡立ち、美味しいお茶。

長きに亘った国上山(ぐがみやま)の五合庵を去った晩年の良寛は、旧和島村島崎の木村家に移り厚い支援を受け貞信尼との交流が始まるなど重要な時期にあたっている。本日の茶話会に木村家の方がお見えになったとお聞きした。

お店の外観。

過日小林古径記念美術館でお会いした時もそうだったが、一段とすっきりお元気な小島先生。良寛の精神と芸術の研究に心身を捧げ、忙しく全国を説いて回られる先生は現代の良寛さんのようだ。

先生、お招き頂き有り難うございました。にむらやのおかみさん、お世話になりました。

二日続きの好天も明日から荒れ模様らしい。

好天の樹下美術館 大池いこいの森。

2023年11月3日(金曜日)

本日文化の日の祝日はよく晴れて温かでした。切れ目なく来館して頂き、外のベンチで休む方もいらっしゃいました。

午後の前庭。

 

前庭のベンチで。

田んぼ際のベンチで。
私と同年配のワンコさん。

お天気に誘われて午後遅く大池いこいの森へ行ってみました。

途中のコスモス。

ビジターセンター脇から橋を渡って対岸の森へ。

橋から西を見る。

お目当ての一つオヤマボクチ。
独特の表情は見飽きません。

イノシシが出ることがあると看板がありましたので奥へは行かないようにしました。

もう一つのお目当て
ツクバネウツギ。

コンパクトカメラで狙ったシジュウカラとエナガの群は高く素早くて上手く写せませんでした。ここは鳥たちの通り道のようでしたのでカメラを変えてまた来てみます。

上越市髙田で午後1時30分ころの27,5度が最高気温。向こう数日はまずまずのお天気のようです。

ご来館の皆さま、まことに有り難うございました。

嬉しい短歌 秋の庭 田と池のコハクチョウ。

2023年10月29日(日曜日)

本日日曜日、午後美術館に寄り来られたお二人と一緒に作品を見てカフェでサンドイッチとサラダを食べた。

昨日のことAさんの短歌が8月の新聞に載っていたと言って、Bさんがそのコピーを持参されました。樹下美術館を詠んだ一首でした。

草一本幹一本愛深き聖地なりし樹下美術館

ああ美術館を草木の一本から愛深い聖地とまで詠んで頂き、何と御礼を申して良いやら。
開館以来長くお訪ね頂き当館を愛しておられること、良く伝わっていました。あの熱い夏、弱りの見える庭に温かな眼を向けていただき、本当に嬉しく思いました。
コピーを持ってお知らせくださったBさん、有り難うございました、とても感謝しています。

さて昨日は雨ザーザー。今日は大きな雲がありましたが時おり陽が射しました。以下はBさんに詠んで頂いたその庭です。

昨日、雨降る窓越しの庭。

以下本日午後の庭です。

開館して17年目、
まるで山道のようになりました。

数日前に患者さんからコハクチョウ(以下ハクチョウ)が来ていると聞いていましたので田んぼへ行ってみました。

途中の中谷内池。小さな池ですが米山が見えて良い眺めです。

頸城区はほくほく線に沿った田んぼで二つのハクチョウの群に出会いました。
思った以上の数で合計100羽ほどいました。渡って来たばかりのせいでしょうか、真っ白です。雁もいましたのでこの先ハクガンの到来が待たれます。

傍らのほくほく線に上り電車がきました。

温かそうな薄にくるまれるようにして行きました。

新柿線に出て東へ走ると朝日池の東側の田に200羽ほどの群がいました。

暮れ始めましたので朝日池で鳥たちのねぐら入りを待ちました。

ところが待てど暮らせど一向に鳥は降りて来ません。群は来るのですが皆通過するではありませんか。
水がすくなく枯れた蓮が多いせいで嫌われているのでしょうか。

すると隣の鵜の池から水鳥の鳴き声が聞こえてきます。
行ってみました。

すっかり暗くなっているのですがいました、いました。盛大な鳴き声とともに沢山いました。

おなかいっぱい食べ無事ねぐらに入った鳥たちには、眠りまでのいっとき自由で幸せな時間があるようです。
周囲にはキツネやタヌキ、ともすればハクビシンなどプレデター(捕食者)がいるはずですが、鵜の池や朝日池なら安心なのでしょう。

私にすれば例年よりも早く、しかも沢山来ているように思いました。この先約先5ヶ月、さらに数を増やし皆でゆっくりしてもらいたいと願っています。

「絵付け陶芸三人展」からその3 黒岩卓実さんの赤絵。

2023年10月28日(土曜日)

小雨ときどき驟雨激しかった土曜日。午前はコロナとインフルエンザのワクチンで一時忙しかった。午後珍しく一時間ほど昼寝をし、読書してから美術館でサラダを食べた。

さて「絵付け陶芸三人展」のご紹介、最後の本日は黒岩卓実さんです。前の正木春蔵さん、鈴木秀昭さんと同じように齋藤三郎を追いながら出会った織部と赤絵の作家さんです。

樹下美術館の開設近い頃、新潟市の方から頂いたのが始まりでした。速筆の赤が醸し出す上品さが魅力でした。

主に轆轤を用いない「たたら」と「手びねり」による成形。器の地は肌色を帯び驚くほど軽く、成形する過程の掌や指の跡が窺えて親しめます。
地色に映える赤で線と模様が描かれ時に緑や独特の青と金が添えられます。配分の良い線とともに模様の花や動物あるいは娘さんが気持ち良く描かれます。

以下は展示中の作品からです。

入ってすぐの赤絵大鉢。縁の凸凹は抹茶茶碗でいうところの「山道」でしょうか、楽しい変化です。胴まわりの動物は中の花蝶とともに器全体を生き生きとさせています。

赤い檜垣模様のふちの三カ所に緑と金彩が施された向付。肉も野菜も美味しく盛られます。

向こうに赤絵の湯呑茶碗、手前に菊の模様でしょうか緑のドットがアクセントの小皿です。
湯飲みの軽さと楽しさは誰もが「ああ」と仰います。小皿は豆、羊羹、水菓子などが映え、たびたびブログにも登場しました。茶碗には轆轤目があります。

古典的な印象の比較的大きな深鉢。

黒岩作品は入ってすぐから左回りに6台の展示台に合計8作品を展示しています。
柔らかさ、軽やかさ、爽やかさなど作者独特の美意識が現れる作品は日用に、装飾に楽しい器ではないでしょうか。

黒岩卓実さんは1947年福岡県大牟田市生まれ、岐阜県は美濃地方の多治見に「たくみ」窯を築かれました。
度重なる貴重な受章歴があり、作品は東西の有名デパートほか全国各地の陶芸店、ミセスなど婦人雑誌など誌上でも人気を博しています。
ちなみに日本の焼き物の60%をほこる美濃地方は荒川豊藏、加藤卓夫ほか人間国宝を輩出している一大産地です。

さてこれまで十分ではありませんが、正木春蔵、鈴木秀昭、黒岩卓実の三氏による絵付け陶芸作品を眺めてきました。長く親しんだ齋藤三郎亡き後、代わる絵付け作品を求めて集めた作家さん。

東洋陶芸を源流として独自の九谷エッセンスを現した正木さん。

器に宇宙の色彩と陰影を満たし、形状にも迫る冒険家鈴木さん。

織部に連なる赤絵に健やで上品な生活感を求められる黒岩さん。

このたびは三者三様の個性ある絵付け陶芸作品の展示です。今日の人気を得るまでの努力の膨大さは私などには想像が出来ません。
おごらず一貫した丁寧な姿勢(作品価格も含め)も共通しているように思うのです。

最後にわが齋藤三郎もそうでしたが鈴木さん、正木さんとも源流が九谷というのも不思議な縁です。そこに美濃が加わることで小ぶりな場内に幸福な膨らみが生まれているのを感じています。

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