明け暮れ 我が家 お出かけ
弥生は冬のお尻拭き
”さくらさくら 弥生の空は 見渡すかぎり 霞か雲か 匂いぞいづる いざやいざや 見に行かん”
歌の通りなら弥生三月は花咲く夢のような季節が期待できる。しかし残念ながら雪国ではそうは行かない。
この月、雪消えの里はいやが上にも汚れと傷みが目立つ。散乱するビニール片や発泡スチロール、黒々と固まった朽ち葉とうなだれた枯れ草、折れた枝が散乱し畑に傷んだ野菜、汚れた残雪の見え隠もあり、裏手のものが片付かない。みな雪が残した事象だ。
比べるまでもなく一見して冬の雪景色の方がはるかに清潔で情緒にまさる。ところが美しかった雪は手品のようにぱっとは消えてくれない。処々に汚れと傷みを残しながら沈むように消える。
それで三月は後片付けと修繕の月になる。弥生は冬のお尻拭き、、、。いつの頃からかそう思うようになった。
樹下美術館の外回りはもうすっかり片付いている。今日午後は暖かさに誘われて初めて庭いじりをした。雪と荒天でひと月おくれの感じがする。キンモクセイの苗木を三株植えて椿の若木を移植し、都忘れを6株株分けした。水を遣ったあと暗くなるまで草取り。つまんだり握ったり、初めの頃の庭いじりは深爪が痛む。遅くなって予報通りに荒れ模様となった。せっかく連休だというのに。
今日のクリスマスローズ。庭で無事に越冬した60株はこれからの楽しみ。
父のレコード部屋
昨日前回のノートの最後の部分を少し加筆した。普段あまり深く考えたこともない範疇に入って行くのはやはり困難をともなう。あっさり触るほうがノートにはいいと反省した。
さて先日のエフゲニー・ザラフィアンツ氏のソナタに葬送行進曲の楽章があった。私の小学校低学年(昭和24年前後)のころ、父は二階でよくこの曲を聴いていた。当時二階には新しくクルミの木で作ってもらった巨大な電蓄があった。ベートーベンの運命もしばしば掛けられた。
曲はいずれも子どもにとって陰鬱だった。レコードが掛かるのは大抵昼間で、しかも日曜日だったと思う。遊びたい日の昼間に流れる葬送行進曲と運命の大音響。何か恐ろしいことでも起こりそうで、遊ぶ友達を捜して家を離れた。
ところで葬送行進曲にはこよなく優しいパートがある。一昨日のザラフィアンツ氏の優しさは際だっていた。休憩時間に「父はこんなパートも気に入っていたのかもしれません」と同行して頂いたNさんに話した。きょとんとするNさんに父の音楽の事を少し付け加えた。
それにしても当時、私たちは階下や外に居ながら、なぜ忌まわしげに大音響などと父のレコードを思い出すのだろう。このノートを書きながら疑問が沸いた。不思議なことにすぐに答が続いた。それは何十年、ずっと忘れたていたことだった。
「お前も聴きなさい」。父は私にそのように言ったと思う。ああ又か、という気持ちがよみがえるので、一度ではなかったのだろう。電蓄の部屋で、レコードに針を置くまでの耐え難い時間。続いて葬送行進曲や運命の大音響に圧倒されながら、父と並んで椅子に座る。その間、ひたすら部屋を出る口実を探し続ける。我慢のすえちょうどよい楽章を見計らって、もういい?と父に聞いて部屋を出た。
一度その部屋で運命とは何かを父から聞かされたような気がする。その話の中で、誰かの自殺のことが触れられた。私は初めて聞く自殺の意味に怖くなり、いたたまれず大音響の部屋を出た。そして不安と罪悪感のようなものがごちゃ混ぜになった頭で表の小さな道を歩いた。いま私が座っているすぐ前の道だ。
後に姉のためにピアノが来た。すると父はピアノを弾きながら今度はシューベルトの冬の旅を歌った。この曲も絶望と死への憧れを歌うもので、子どもには重過ぎる。それを父は飽くことなく時には酔うように歌っていた。
時は過ぎて電蓄がステレオに変わり、私は高校生になった。そのころには耳障りのいいピアノやバイオリンのコンチェルトに月光ソナタなどが聴かれ、シャンソンとロシア民謡が少し混じった。下宿から帰った週末に私も父のレコードを時々聴いた。一連の過程であの忌まわしい電蓄レコードの日はだんだんと遠くへ行ってしまった。
振り返ればなぜ昔の父は重い曲ばかりを聴いていたのだろう。そして5人姉弟の中でなぜ私が父とそれらを聴かなければならなかったのだろうか。それともこんなことには特別な意味などなかったのか。
いずれにしても子どもの私にクラシックを聴かせたい父の目論見?はかなり外れた。大学へ通い始めた夏休み、帰郷した私は二階の窓を開け放った。そして持参したマイルス・デビスのレコードを大音響で掛けた。庭のブドウ棚で仕事をしている父に聴かせるためだ。仕事を終えた父は「ジャズもいいな」とお世辞混じりの顔で言った。
後年、私は父と同じ道を歩むことになった。父は墓参りもしなければ仏壇へも近づかない人だった。また、かって渡った満州のこともずっと口を閉ざしたままだった。医家が五代も続けば先祖、縁者たちとの間に受け容れがたい確執があったのではないか。父は12人の兄弟姉妹の長男で、恥ずかしながら私も5人の長男だ。
結局自分は父のことを多少は知っているが、よく知らないと言うべきだろう。しかし亡くなって久しい父をいま思い出していると、近くを歩く服ズレが聞こえるような気がして、不意に涙が出そうになる。この年になって父親の体温を思い出すとは。
これらはザラフィアンツ氏のピアノのせいかもしれない。彼のピアノには魂を揺さぶられた。
(思い出しながら少し加筆をしました)
異国東京
今日は日帰りで東京へ。ああ、これだから東京に住む人が多いのかも、と思うほど良いお天気。何十年ぶりの中央線で千駄ヶ谷へ行き、初めての津田ホールでエフゲニー・ザラフィアンツ氏のピアノリサイタルを聴いた。プログラムはオールショパンでいずれも重厚。アンコールにポピュラーなショパンが演奏され、生誕200周年の早春に相応しい心洗われるコンサートだった。
都内のいくつかの菓子店に長い行列があった。いつもながら東京の人の行列には感心させられる。そしてこの度の上京でなぜかポニーテールの若い女性を多く見た。これが傾向なら嬉しい。何もかも新しくなる昨今、少しでも戻りを感じるものがあると心なごむ。
後へは戻らないで、と思ったのは禁煙だった。JR駅、新幹線はもとよりほくほく線までも禁煙。道中は清々しかった。ついにこんな時代になったんだと、心底感心した。社会ごと進む禁煙はITやWebとは別の晴々とした社会革新の印象を覚える。
それにしても年に数度の東京は次第に異国のようになっていく。帰りの車中、相変わらず冴えない自分が窓に映っていた。変わってみたいがなかなか変われない。多分自分(自我)は命とと共に授かった(贈られた)ものだから、磨くのはいいがあまりいじくるのもよくないかもしれない。
大変シックなプログラム
いじめっ子で人なつこいヒヨドリ
何度かドカ雪に見舞われた冬。大雪の最中に庭にパンくずなどをまくとスズメが沢山集まった。
間もなく一羽のヒヨドリが加わったが、あっという間に彼(彼女かも)はスズメたちを追っ払って場所を占領した。その後ミカンなどをやるうちに鳴いて餌を催促するようになった。大変地味だがヒヨドリはよく見ると渋くていい味といえなくもない。
餌を与えて何日か後、カーテンを開けただけで遠くから近くの枝へ来るようになった。試しに窓際の手すりに餌を置いたら用心深く寄ってきて素早く取った。しばらく好天が続いた時は何処かへ行ったが、最近の悪天候でまた戻って来た。
ヒヨドリは庭木に巣を作ったり家のまわりでキーと鳴くなど、身近な鳥だ。一方でスズメにひどく乱暴なのに、案外簡単に人慣れするのには驚いた。きびしい冬でお腹が空いていたのだろうか。
間もなく鳥も結婚の季節。これから餌が増えるだろうから人手を中止しようと思う。止めたらキーキーと鳴くだろうな。
目の前でバナナ取った今朝のヒヨドリ。
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スズメを追うヒヨドリ:大雪の頃 | しつこく威嚇:大雪のころ |
淡雪をつかむ少女
淡雪を少女がサッと掴みたり sousi
朝から冷えて予報どおりに午後は雪となった。用事の車中から、下校途中の女の子が降る雪をサッと掴むのを見た。そういえば昔の登下校で自分たちもやったことがある。掴んだ雪の大きさを見せあってもすぐに溶けてしまう。きりがなくて次々と取りながら歩いたりした。
今日の雪はふわりふわりと降った。私も取ってみたくなり、車から降りた時に掴んだ。握った手を開くと雪はすーっと消えて、昔と同じだった。

浅田真央選手が振り返る
練習まではとても緊張し、競技が近づくにつれて集中してきて、演技中は喜びを感じていた。夕刻のニュースで浅田真央選手がこんな風に振り返っていた。
テレビを見ているだけで緊張してしまう競技で、彼女の競技者としての完成度に驚かされる。上位の選手たちはきっと同じ心境なのだろう。
いいニュースが無い中で気の毒なほどメディアに晒される選手たち。オリンピックが終わったら何が日本を明るくするのだろう。当美術館も地域のささやかな一灯たりうるよう頑張ろう。
茶の午後
雪寒北嶺 梅香南枝 の扇面を懸けて。
風雨の午後、知人をお正客に茶を点てた。荒天をそれなりのご馳走にして旧交温むるひと時だった。
一期一会が漂い、粗忽な私にも何とか濃茶が練り上がった。この機会に少しおさらいをしようと思った。
茶の予習復習
明日はあるお客様を招いて茶を差し上げる日。久しく座って点てていないので家内を相手に予習をさせてもらった。
香が焚かれみぞれの音がしている。手順に詰まっていると亡き師の面影が現れた。不肖の弟子ながら茶をやれる恩を感じた。
※頭にある表紙を変えました。人や赤ちゃんの気配があって気に入っています。
椿の蕾のボタニカルアートを終了にしました。
B4muse S 1mm厚ケント紙を半分にカットしたボードに描きました(B5サイズ)。
1月25日から描き始めた椿の蕾を完成としました。まだ手を加えたいところもありましたが収拾が付かなくなりそうなので終了というわけです。恥ずかしながら同業の会報3月号表紙になります。
分量の少ない絵でしたが、雨雪を貫こうとする蕾の形状に植物の洗練を感じました。
昨年は白花デンドロビュウムでした。白い花は引き立ちますが、描くとなると大変でした。白花には容易に描かせまいとする気高さのようなものがあるように感じられました。
椿の蕾は額装して樹下美術館のトイレに架ける予定です。
晩冬の食卓
どうにかお天気がもった一日。美術館の雪を見に行った妻が土手からフキノトウを沢山採ってきた。いつもならあらかたとられてしまう所、今日はまさかの先駆けで採れたらしい。それにしても早いこと。
宮城県に居る「フォルテシモな豚飼い」の弟から時期のいいマダラが送られきた。それでフキノトウの天ぷらにアラ汁、味噌デンガクの夕食となった。春冬混淆の卓、明日からお天気の方は雪模様。
「外で食べるより私が作ったほうがおいしい」という妻。我が家はほとんど外食をしない(ほんの時たまの外食を妻はありがと、と言う)。今夜の天ぷらの中に私が苦手な白子があって、妻だけこっそり食べたらしい。
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