明け暮れ 我が家 お出かけ
淡路の先輩から鯵、そして西方の人
昨日、学生時代の運動部でお世話になった淡路島の先輩からトツカアジが届けられた。他所のアジとは「まるでレベルが違う」としたためてあった。外見は普通のアジに見えるが名は初めてだった。
送り主のA氏は昭和30年代後半、母校の軟式庭球部を医学部リーグの団体戦で全日本制覇させたエースだった。氏の身体能力と勝負勘は文字通り群を抜いていた。
振り返ると学生時代に交わった西日本(関西・四国・九州・一部東海も)の級友、先輩は私などとは随分違っていた。男っぽく勝ち気、顔立ちも精悍。同じ日本人なのに異国の人の印象さえあった。
「いいか、相手がこう来たらこう行くんや」、部員たちを見回して檄を飛ばすA氏。眼差しには熱さと冷静さが共にあった。
さて頂いたアジを昨夜は手巻き寿司に、今夜は塩焼きにした。添えられた手紙に寿司メシの要点が記されていた。その通りに作った妻は出来上がりの加減を絶賛した。淡路のお寿司屋のレシピに準じているらしい。
そして今夜、こんなに美味しいアジがあろうとは、と声を揃えて塩焼きを食べた。
鯵は普段でも関脇以上の美味しさだが、この度のトツカアジは明らかに横綱を倒そうという勢いがあった。親交ある王元監督にも送ると書いてあった。
A氏は仕事をセミリタイアして釣りを始められた。同じ部活で、補欠を争っていた私などを忘れないで下さり光栄だと思っている。また全日本を制した当時のA氏のペア(前衛)が新潟県・県北の先輩だったことも密かな誇りだ。
電話で礼を述べると、塩焼きを今日に遅らせたのは正解だということ。また、鳴門の荒潮で揉まれた魚は日本海の上品な魚とは違うんだ、と先輩らしい言葉を頂戴した。
所変われば品変わる、そして人も。私が知った西方の人たちは、おしなべてハキハキとして勝負強く、情が厚い。こちらへ帰って35年、たまに電話や手紙でA氏に接すると、ただただ有り難く元気になる。
素晴らしい。
夜更かしのデンマーク戦、まさかまさかのチャンスを次々ものにして素晴らしかった。選手たちの何とタフなこと。また直後のインタビューでは、寝不足の私たちに「ゆっくり休んでまた応援して」というコメントまであった。選手は強い上にこまやかで、それがまた嬉しい。
代表選手のサッカーをみて、私たち日本人はまだ進化を続けているんだ、と希望を感じた。
朝のカーテンが祝福して揺れる 。
なのに国技・大相撲の恥ずかしいこと。変われるのだろうか。
草取りして月
午後からの休診日で夕刻に庭の草取りをした。美術館を営んで3年、展示とともに大切なのは庭。庭に大切な作業は草取りだとなかば悟っている。
草取りは無心の時間という点で精神にもいい。またある種修行の感じもする。終えて手を洗うと庭も気持ちもさっぱり。
今夕の月、本当はもっと大きく見えるのに。
あまつさえ遅くなって月に気がつく時など、自分も花や草であるかのような気持ちがよぎる。
家に帰って昨日頂いたタケノコを食べた。下さった方が「ジャガイモやタマネギなどは入れないで」というタケノコ汁が美味しかった。桑取のタケノコ。この時期なのにとても柔らかく味も濃かった。
尾神岳、浦川原、桑取、そして秘密。
尾神岳、浦川原、桑取、そして秘密。これらはいずれも今年頂いたヤマタケノコ(ヒメタケノコ)の産地だ。毎年決まった方が得意の場所に出掛けては分けて下さる。ある方は決して場所を明かさず、秘密ですと仰る。
昔、子どもたちとさかんに出掛けた尾神岳、浦川原は月影小学校と雅楽、濱谷浩さんの桑取、そして秘密の場所。それぞれ何がしかの思いを絡ませて楽しませて頂いている。麗しい山の土と水が育てたタケノコは味・香り・歯ごたえ、見た目、みな良くて飽きることがない。
その昔昭和30年前後、毎年家族で池の平へ出掛けて池廼屋さんに泊まった。翌朝おにぎりを作ってもらいイモリ池を通って先へ歩く。すぐ右手に東大の寮があって、そのあたりから小さな谷川に沿ってワラビやタケノコが沢山採れた。持参した飯ごうに川の水をすくって味噌を溶き、コッヘルで炊いてタケノコ汁を作った。カッコー鳴く草原の昼食は美味しかった。毎年採り続けても無くならないタケノコに少々驚かされる。
チマキ
午後、お年寄りの急な腰痛を往診した。骨折でなくてほっとした。
大おおおばあちゃんの診察を終えると、年配のご夫婦はちまき作りに戻られた。奥さんが笹にお米を詰め、ご主人が巻いていく。近くの作業所で出荷用を作り、家では自分たちのを作るという。
立派な笹が使われていた。銅鍋で煮ると笹の色が青いまま褪せないと聞いた。見てると呼吸のあった仕事ぶり、出来たらお持ちしますと仰ってくださった。
これからの季節、梅雨空とチマキはうるわしい田舎の風物詩だ。お宅のまわりの田んぼがいよいよ生気を増していた。
その昔、アカシアの花などを食べようとした私たち。後によそからチマキを頂くことがあった。砂糖入りのきな粉を付けて、あまりの美味しさに頭がヘンになりそうだった。
海を旅した陶片の女の子
食事の部屋の書棚に海へ行った時に少しずつ拾った陶片が置いてある。シーグラスと同じで、海に捨てられた茶碗や皿など(またそのかけら)が海底を旅して割れて細かになり、角がとれたものだ。おしなべておだやかな形状になっている。
なにしろ海はあらゆるものを揺すって揉んで洗う。固くトゲトゲしたものなどみな小さく丸くする。最後は砂にそしてミネラルまでしたいのだろう。ありあまる時間と何かのはずみで命まで作ってしまったのだから、海のなんという根気と力だろう。
いっぽう地上は社会などもあって複雑だ。しかしそこで我々も海と同じようにゆすられ揉まれ洗われる。最後はやはりミネラルだろうが、できれば文化を創ることを期待されている。偉そうにする必要はないが、茶碗と私たちの違いはそのへんかもしれない。
さて昼食後、何気なく陶片をみていると一つのかけらが気になった。
手に取ると突然女の子の顔に見えた。上目づかいで真剣に前を見ている。あごから頬の線も愛らしく愛着を覚えた。
不思議なもので一度そう見てしまうとあたかも女の子が描かれたような気がしてくる。実際は波、渦巻き、秋草などが描かれているようだ。
かけらと私たちは異なる存在だが、こうして楽しく出会えるのも何かのおぼしめしにちがいない。
顔・長径3,5㎝ほど
裏側・高台があり、大きめの皿のようだ
淡紅色のアカシア、そして大連など
15年くらい前、当時上越市大潟区は大潟町で、町の広報誌にリレー随想というコーナーがあった。次の人を指名してコラムをつないで行くもので随分続いていた。思えばこんなところも合併前の良いところだった。
私の番になって、町の貴重な樹木というようなタイトルで書いた。その中で赤いアカシア(ニセアカシア)を一つとして挙げた。
赤といっても薄い赤むらさき色である。よく見ないと分からないが、大潟区蜘蛛ケ池(くもがいけ)の県道沿いに二本ある。かなりの巨木で、久しぶりに花の時期を通ったらやはり赤っぽく咲いていた。心なしか香りを強めに感じたのも15年前と同じだった。
大潟区はアカシアが多い。あたり白一色の花に囲まれてひっそりと色を帯びる姿はけなげだ。
ところでアカシアといえば、昔、家の庭のへりに厄介者のような感じで樹があった。戦争後、中国から引き揚げてすぐの頃、母がそのアカシアの花を炒めて食事に出したことがあった。
真っ白でいい匂いの花を母と採るのは楽しかった。花がフライパンの中で茶色に炒められていく様をありありと覚えている。
しかし食卓に出たものは食べられなかった。苦かったのか家族全員がダメだったように思う。
この時のことは素晴らしい期待が見事に外れる人生最初の記憶かもしれない。
それにしてもサツマイモのツル、アカシアの花、たぶんほかにも、、、。当時母に知り合いもなく、家にはお金も無かった。それで普通は食べないようなものを美味しいよ!と言って料理にした。アカシアの炒め物も初体験だったようで、もしかしたらと思って作ったらしい。最悪の結果に、空腹の家族の落胆と母への非難は如何ばかりだったろう。
ところでその昔、若い母の看護婦として最初の赴任地が旧満州大連だった。大連は大都市で、黒々とした木肌のアカシア並木やヤマトホテルがあったと聞いた。父と出会う直前だったらしい。それが耳に残っていて学生時代に「アカシアの大連」(清岡卓行著、1969年度芥川賞受賞作品)を読んだ。良い本だった。
済みません、話が色々になりました。
貴重な明治生まれ
美術館たる者、たとえ小館であっても図録一冊出せなくてそれとは言えない。このところ決めた期限が迫って懸案の制作に追われる毎日となった。いつしか大小400点に迫った分量もあるが、日頃の整理の甘さを痛感させられている。
それで毎日のように明け方まで格闘が続く。若ければもっとはかどるのに、一日は35時間くらい、一ヶ月は45日くらい欲しい、など考えるまでになった。それに何とかノートも、、、。
さて一先ず色々置いて、私が在宅でフォローしている方に明治生まれの人が4人いらっしゃる。いずれも女性でそのうち3人は100才を越えられた。4人のうち3人の方が杖で室内を歩行され、デイサービスへも通われる。お一人は押し車を使って近隣を散歩される。
残念ながら今日訪ねた方は骨折後に寝たきりとなられた。よくうとうとされているが、私たちが訪ねると一転して言語が冴える。今日の話をつないでみると次ぎのようになった。
「おや先生、相変わらず惚れ惚れするようないい男ですねえ。私がもっと若ければ本当に惚れるところですよ。
これでも学校時代の私は飛び競争の選手で、試合で直江津や柿崎までよーく歩いて行ったもんです。マイクロバスなんて無かったですから。
その時の先生がまたいい男で、私を好きだったらしいです。しかし私はまだ若かったからそんなことは分からなかったんです。今なら惚れるのに残念だったですよ、本当に。 しかし先生は男前だ、お帰りは気をつけて!先生もお元気で!」
すらりとして長身、言葉もきれいで、いつも似たようなことを仰る。要は褒めてやるからさっさと用事を済ませて帰りなさい、という風にも聞こえて、さすがだと思う。
よく面倒を見られている息子さんと、同行の看護師がくすくす笑いながら聞いている。
今日は明治生まれの女性から多めに褒められて疲れが和らいだ。それにしても彼女たちの存在は非常に貴重だ。お会いしてお話できるのを幸せに思う。
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樹下美術館隣接の庭のミヤコワスレ | 同じにヒメサユリ(乙女百合) |
ナニワイバラ、より白く
降ったり止んだりしながら長雨の気配となった。寒暖に揺さぶられ風邪の方が増えている。
先日の晴れ間、妻が仕事場の車庫に懸けたナニワイバラが満開だった。
今日夕方の雨を恨みながら花は白さを増したように見えた。
あたりで田植えは終り、弟が帰った
朝から風雨に見舞われた日曜日。昼過ぎ宮城から来ていた弟一家が帰った。弟は「フォルテシモな豚飼い」を書いて以来面白い酪農家に加えて面白い文士の趣を漂わせ始めていた。
彼独特の風土感覚と養豚法が話題となり宮城県知事などとも面会したらしい。昨夜の食事では昨今の芸術背景の浅さを嘆き、ペンネームや続編などの戯れ言をのたまって楽しかった。豚飼いの家の若い姪たちは、テレビもゲームも無く団らんと本で育ったので天使のようだ。それがいきなり私のスキを突いてくるので油断できない。
樹下美術館のまわりは田植えの後、まるで湖と化した。しばらくは最も良い季節が続くだろう。
頸城野の田面に浮かぶ樹下の舟 さきくあらまし三歳(みとせ)旅して
sousi
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