医療・保健・福祉・新型コロナウイルス
忙しさ
美術館を営んでいると私のことをヒマな人と思われるかも知れません。しかし自ら言うのも恥ずかしいのですが、何かと本業(診療所)も忙しくしています。ちなみに昨日を振り返ってみました。
●午前の外来は40人ほどの診察。この間に心臓症状があって心電図に異常が見られた方を病院循環器科へ、またレントゲンに異常はなかったものの約一ヶ月カラ咳が続いている方を病院呼吸器科へそれぞれ紹介状を書いた。ほかに施設リハビリを受ける方の書類を終える。
※専門科への紹介は診療所の大切な役割だと思っています。
●昼近くになって、脳血管障害と認知症で長く在宅療養を続けられた方の急変の電話。緊急往診をしたが、処置の施しようがなく看取りとなって診断書を書いた。息子さんご夫婦は熱心な介護を続けられた。日中の看取りはあまり経験がない。
●午後から小学校で健康診断、150人ほどを診た。本日も続きがある。
●帰ってから在宅患者さんの往診と訪問で4カ所を回る。
●在宅まわりを終えて夕刻の診療。熱の下がらない旅行中の幼児を診た。インフルエンザとは考えにくかったが、昨年今頃の新型騒動が思い出された。明後日に帰る予定という、ぜひ元気になってほしい。
●午後7時から月一度の介護保険の要介護認定審査会へ。今回は20人分と少ないが100ページの資料を読み込んで臨む。3月にメンバーの組み替えがあったが、今回の委員もみないい人達だ。上越市には合計24チームの審査合議体があり、保健医療福祉の関係者144人が委員として参加し審査しています。
●審査会から帰ってから夕食(この間に妻は入所中の実家の母が痙攣を起こして施設へ呼ばれていた)。
●昼に要介護認定に必要な7件の医師意見書が新たに届いて12件となった。
忙しい日には「多くの人がもっと忙しくしているはず」などと思うようにしています。
(5月13日 木曜日 午前1時15分記載、すぐに寝なくては)
伺ったお宅で
ここのお宅では比較的若いご主人が奥様を長く診ておられる。部屋はいつも整って世話はこまやかだ。今日は発熱で伺って、処置のあと薬を置いた。
外へ出ると部屋の前の庭でモクレンがびっしりと蕾を付けていた。冷たい雨のなか花を待ちきれない様子だった。
月一度伺っているお宅でおじいちゃんの蒲団からいきなり子犬が飛び出した。家に来たばかりというが、何て可愛いのだろう。
お二人暮らしのおじいちゃんは寝たきりのおばあちゃんの世話をされている。診察の前に「おばあちゃんのお名前は私の家内と同じです」と声を掛けた。目を開けられた後、わずかの表情でありがとう、という小声が聞こえた。真冬のころよりも反応されるようになった。
仕事が始まり、インフルエンザは?
看取りや往診もあった正月休みがあっという間に終わった。仕事始めとなる今日、大人のインフルエンザの方が何人か来られた。皆さん高熱だった。
新型インフルエンザが多い分、通常のインフルエンザが少なめという報道が12月にあった。A型の場合、すでに現場では両者の区別が付かない。はたして新型の強毒化や耐性など進化はどうなのだろう。遅れたワクチンとウィルスのせめぎ合いが続く。公的な情報だけが頼りだ。減少傾向とあるもこれからが本番、油断は出来ない。
夕食後遅くに陶齋の茶碗で抹茶を飲んだ。梅と笹が書かれた大きな茶碗。笹はそれぞれ雪をかぶり、如何にも富本憲吉一門といった文様が描かれている。
小康となっていた雪は今夜あたりからまた降るようだ。予報は暖冬だったが大雪を覚悟したほうが気持ちは楽ということもあろう。
留学の時に健康診断書を書いた人
今から20年以上も前、夏だったろうか、用事で直江津郵便局へ行った。ガランとした局内の窓口にアルバイトの女子高校生が座っていた。私の近くの生徒さんだった。
受験シーズンになると、彼女はアメリカの美術学校へ留学するための健康診断書を、と来られた。アメリカ留学は感染症のチェックが厳しい。辞書を片手に少々汗して書類を書いた。
年月を経てその人はイェール大学の若いオリエント史研究者と結婚された。それで今年初夏のころ、ご夫婦で郷里上越市大潟区の親御さんを訪ね、樹下美術館にも寄って下さった。その時はお会いすることが出来なかったが、今回身内のご不幸で急遽再び帰郷された。
FREUD'S WOMEN Author:LISA APPIGNANSESI AND JOHN FORRESTER
Cover design:Kaoru Tamura
先日、お線香を上げに実家へ伺って、彼女にお会いした。沢山の教養を積まれ、しかもお元気な様子は頼もしかった。そのおり、ご自分が装丁された本を二冊頂いた。フロイトや愛着理論に関わる精神・心理の専門書だった。彼女の周辺にいくつも学問があることを眩しく思った。
高校時代の郵便局アルバイトからもう随分と経っている。平坦ではなかったはずの道で、若き志を維持されたKaoruさんに心から拍手をした。
ATTACHMENT THEORY AND PSYCHOANALYSIS Author: PETER FONAGY
Cover design:Kaoru Tamura
ついに新型インフルエンザ
今週初め、私の診療所で大きな出来事がありました。新型インフルエンザの経験でした。これが過日記述したフェーズ6なのかとやや奇妙な感じでした。掲載を迷いましたが、今後に向けて少々のことを綴ることにしました。
下の写真は診療所に続く古い自宅居間です。ここは廊下同然、ある種空き部屋になっていました。少し前に部屋を片づけて、ティッシュ、医療用ゴム手、アルコールジェル、聴診器などを置きました。新型インフルエンザが疑われる患者さんに備えるためでした。
7月27日月曜日午後、診療所の受付で「39度1分です」というスタッフ同士の会話が聞こえました。気になりましたので、「待合室は止めて、マスクと手の消毒をしてもらって」と話しました。関東から旅行中の児童と付き添いさんです。待合室には4、5人の一般の方がおられました。
すぐに看護師が二人を外から写真の居間へ誘導しました。ここで鼻腔から採取した児童のサンプルが迅速診断キットでA型陽性でした。新型インフルエンザが濃厚です。その後、保健所とのやりとりで、児童の自宅で姉が新型に感染していることがわかった、と知らされました。
翌日、保健所員がPCR法(確定診断)のサンプル採取用具を持参しました。写真の部屋で付き添いの方ほか4人を対象に鼻腔からサンプリングをしました。7月29日、発熱の児だけがPCR陽性、新型インフルエンザ確定と知らされました。
マスクや手袋で対応した私たちスタッフは濃厚接触者とみなされないということでした。またその後の異常もありませんでした。
振り返れば医療機関の対応について、公式な通知が次々と変わった時期でした。正直、診療は漠然とした戸惑いを否めませんでした。また居間での診察の適否も課題でしょう。簡単ながら以下のような感想をまとめてみました。
①新型インフルエンザはやはり身近にあった。
②新型インフルエンザは夏でも油断できない。
③夏休み中のサーベイランス(届け出・監視)は別途の考慮が必要かも知れない。
④夏休み後、学校を中心に急速な拡大の懸念がある。
⑤日常の予防(清潔習慣、カゼのマスク着用など)はずっと続けたい。
この度の対応はやや事大だったかもしれませんが、以下のことを意識しました。
「ウイルスはまだ若く、強毒化や通年性(夏型?)など今後、思わぬ変異を否定できない。感染が増えれば変異機会も増え、そして死亡者も。この一点で、当面はほかの疾患よりやや厳格な扱いが求められるのではないか」という意識でした。
話題が美術館から離れてしまって、申し分けありません。お互いが意識を維持して、なんとか新型インフルエンザを乗り越えましょう。落ち着くまで数年はかかるとも言われています。
フェーズ6
先日フェーズ5を書いたばかり。ついにWHOは新型インフルエンザの警戒水準を6にした。こんなにやんわりとした形は想像出来なかった。しかし国内外の感染は穏やかさを装いながら着実に拡大している。一方で夏場も続く流行は衣の下に鎧を見る思いがする。
これまで国の対応はなにかと劇場的でやや滑稽だった。これから本番、安直な点から面へ、形式から科学へ、新たな英知の結集を願いたい。
チャンWHO事務局長はこのたび以下の指摘をされた。
○今後感染の首座となろう南半球の途上国への支援。
○予想される2波への備え。
○ことは始まったばかり。 まったくその通りだと思う。
終息まで数年の見通しが示された。長引くほどウイルスは複雑な変異を重ねるだろう。南半球の推移を見ながら連立方程式に挑むような作業がはじまる。
美術館の作品と庭は相変わらず静かで元気だ。
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夢みはじめたガクアジサイ | 間もなく開花、120本のテッポウ百合 |
グループホーム
近くにグループホームがあって、月に一度伺っている。グループホームでは一定の認知症のあるお年寄りの方々が職員さんたちに見守られながら協同的に生活をしている。部屋は個室。介護保険の時代になって伸び、それぞれ地域で大切な場として定着している。
館内は穏やかで、時々皆さんとスタッフさんの歌声が聞こえたりする。今日の訪問では目の前の林に白い藤が沢山咲いていた。
長いつきあいとなったAさんの部屋で小さな箱を見せてもらった。彼女の大好きな可愛い可愛い品が入っていた。ここでは多くの方が、それぞれに大好きな品を持っている。
皆さんが比較的安定していて長くいらっしゃるのが嬉しい。
押し車の荷台に小さな箱。緑色の蓋が付いている。
ゴッホのアーモンドの花の絵に似た白藤。
フェーズ5のゴールデンウイーク
ゴールデンウイークがピークに入った。子ども、孫達、縁者が次々にやってくる。今日は5人、明日は2人、明後日は6人。ほかに親たちの世話もあるから大変だ。それでもアテにされれば頑張ってしまう。本当に大変なのは妻。大丈夫だろうか。
段々と家の泊まりを少なくして、近くの温泉宿などに分散してもらうようになった。親を長くみて子もそこそこ見る世代など、私たちの前後が初めてで最後かもしれない。
夕刻、庭でクレマチスの棚を作った。昨年のもいれると5つになった。庭は本当に落ち着く。実は家のそばにいるのが何かと安心で、ある種職業柄の中毒症状?
庭から田んぼの向こう300メートルほどに高速道路が見える。上下線とも切れ目無く車が続く。猛スピードのパトカーが忙しそうだった。
4月28日、フェーズ4移行をを書いたばかりが、瞬く間に5となった。新型インフルエンザの危機につま先を浸しながらの民族大移動。フェーズ5でここまで許容なのか、本当のところ不安がある。
検疫は頑張っているが一方で医療体制に穴が見える。やや小康の今、不足克服を願っている。休暇中だが行政や医師会は会議だろう。
昨年から集め始めたシーグラス。
疲れを慰めてくれる。
マーガレット・チャン
WHO(本部ジュネーブ)のマーガレット・チャン事務局長は29日、新型インフルエンザの警戒水準を4から5に引き上げた。彼女は「パンデミックが差し迫っているとの強い警告」と述べ人類全体が深刻な危機にさらされているという認識を示した。
突然の大事に対して、チャン氏の一連の決定行動は素早かった。今後どうあれ、これまでの決定と結果の確度の高さに驚く。鳥インフルエンザ一色(一定の方向転換が始まっていた模様)の世界で、かつ経済減速のジレンマの中、畏敬を禁じ得ない。
「国籍を忘れて任務にあたる」。就任時の彼女の言葉だ。氏は中国人で2006年から現職にあるという。また過去、香港における最初の鳥インフルエンザで、猛反対のなか大規模なニワトリの処分を行い、SARSの苦い経験ではその渦中にあったと書かれている。たぶん現場で火中の栗を拾い続けた人なのだろう。氏の警告には耳を傾けていたい。
本日国内でも疑い者が出た。このほか体制が追いつかず、水際で相当数の検疫漏れがあった模様だ。残念だがこれが現実なのだろう。そして自衛隊の医療部門が投入された。検疫の現場はすでに疲労が始まっているのではないだろうか。ぜひ二次感染も回避して欲しい。地域医療の担い手の一人として緊張して備えたいと思う。
新型インフルエンザの第一ラウンド
28日、WHOは前回に続いて再度の緊急委員会を開いた。そこで豚インフルエンザの警戒水準をフェーズ3から4に引き上げた。名称も豚インフルエンザから「新型インフルエンザ」へ。H1N1変異ウイルスの同定からわずか1週間。第一ラウンドで一気にパンデミックへのルートが開けてしまった。
ブタのH1N1はヒトと共通していて、相手はすぐ近くに居たことになる。スペイン風邪から続くH1N1由来の亜型であり油断出来ない。鳥とともにアジアのブタも当面の鍵となりそうだ。
評価はともかく、昔読んだライヤル・ワトソンの「生命潮流」をふと思い出す。ウイルスにも集合無意識(ミーム?)のような同時現象があるのだろうか。地球の表裏から出発した複数の新型が交雑するようなストーリーで。
相手はまだ若く変化自在と考えられる。後追いを余儀なくされるワクチンが安定するのに年単位の時間が掛かるかもしれない。抗ウイルス薬はどうだろう。薬剤感受性とウイルス変異へのモニターは欠かせない。当面タフな根くらべが続く。
好材料が乏しい今、スペイン風邪の徹底した解析は一部で有望なようだ。願わくばこの規模で一旦終息し、時間を稼ぎたい所だろう。一連の経緯は人間があざ笑われているようで悔しい。
右下のルートが如何にもと見えてくる。
咳エチケット(大きくしてご覧下さい)
※再び美術館から離れてしまい申し分けありません。
- 花頭窓、二十三夜塔、庚申塔、社寺
- 樹下だより
- 齋藤三郎(陶齋)
- 倉石隆
- 小山作之助・夏は来ぬ
- 聴老(お年寄り&昔の話)
- 医療・保健・福祉・新型コロナウイルス
- 花鳥・庭・生き物
- 空・海・気象
- 頸城野点景
- ほくほく線電車&乗り物
- 社会・政治・環境
- 明け暮れ 我が家 お出かけ
- 文化・美術・音楽・本・映画・スポーツ
- 食・飲・茶・器
- 拙(歌、句、文)
- こども
- 館長の作品。
- 今年の齋藤三郎は「茶道具展」です。
- 今年の倉石隆は「男の肖像展」です。
- フカミ美術の懇親会が髙田であった 霧を抜けて三和区の喫茶去へ。
- シジュウカラガンに初めて出会った 北帰行が始まっているのだろう。
- 温かな日に訊ねたお宅 柿崎海岸 首輪のコハクチョウ。
- 大分県佐伯のフルーツトマト ジョージ・シャーリングの「まるで春のよう」
- 寒波が続く 道路に降りる鳥、海岸に現れるイノシシ。
- 懸案の小山作之助生誕160周年記念イベント最終回が終わった。
- 本日会場でリハーサル。
- 今夜のNHK再放送は山中さんご夫妻だった。
- 一瞬にして消えたファイル ドヴォルザークの音楽。
- 雪が少ない当地 鳥たちは戻っている。
- 強風の日のパソコンの不具合 美しいビバルディの冬。
- オールドメディアに向う生活 鬼平犯科帳 小山作之助記念イベント。
- 寒波は峠を過ぎ小林古径記念美術館へ 昼抜きの食事例。
- 日米首脳会議は何とか無事に終わった 強風下のカモメ 道路に出て来る鳥たち。
- 石破首相は果たしてトランプ大統領の受容に叶うのか 雪見舞い。
- 寒波の日、A氏のレコードを頂きに、帰路のタカ。
- 再びの寒波 本当に年の割に元気なのか。
- 早くも立春、蕗のトウ。
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