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トキを悼む

2008年12月15日(月曜日)

 佐渡で放鳥後にカップルとなった二羽のトキのうち、メスの死亡が昨日確認された。今日になって発見現場の映像を見たが、最後は地上の動物の餌と果てたようだった。散らばる羽、わずかの骨片、はかなげな亡きがらは痛ましかった。

 

縄張りがからんで反撃された可能性が伝えられている。冬に戻った猛禽が、トキの闖入に一撃を加えたのだろうか。映像で、左の頸にたて15㎝ほど皮膚が露出している傷があるように見えた。

 

ところで、篭の鳥の最後は横たわるだけだが、自然では食されることも現前にされた。放鳥には、いっそう厳しい生態系への視点が求められそうだ。死とその先にあった法の克服は、思いのほか困難な課題だと考えられる。

 

 それにしても受傷後からメスの傍らを離れなかったオス。また彼が空から懸命にメスを探し続けた様子も観察されている。生きものの愛情は深く、出来事の象徴性は貴い。犠牲となったトキNo15を心から悼みたい。

時を惜しんで

2008年12月14日(日曜日)

 今夕刻、土日の上京から帰りました。10月7日に見残した国立新美術館のピカソ展を観てきました。いつものように東京のN、浜松のK、上越から小生で同級生夫婦が集りました。年に一度のつもりが、今年は先回の2ヶ月後にまた会ってしまいました。
 

土曜の夕刻はKの提案で、虎ノ門・智美術館(とも美術館)で加藤陶九郎・重高・高宏の三代展を観ました。美術館では魅惑的な階段に導かれて地下へ下ります。光を落とした館内で、志野・黄瀬戸を中心に織部、黒織部など一統の優作が高質な照明に映えて楽しめました。
翌日曜日、開館直後に入ったピカソ展は最終日です。大勢の来館者がありました。人生を共にした女性が変わるたびに変化を遂げたピカソ芸術。しかもそれぞれが時代を切り開いたのですから驚きます。徹底したデッサンと線の訓練、さらに貴重な天賦があったに違いありません。余談ですがここでも額が簡素だな、と感じました。地元の美術館が修復中の海外巡回展ですから、額も仮のものなのでしょうね。少し残念でした。

 

土曜は夕食を4時間、そのあとK夫婦と前回のシガーバーで2時間。沢山話をして冬の宵を惜しみました。松永弾正のきわどさを語り、脂質の最前線を説明した学者N。兼続を知っていて嬉しかったです。探求の人Kは加藤陶九郎の永仁の壺事件とその背景を話し、ジャズを聴くようになったと語りました。
ありきたりながら、小生は映画「ファニー」と「シェルブールの雨傘」です。よく似たストーリーと音楽の良さなどを話し、若きレスリー・キャロンとカトリーヌ・ドゥヌーヴを懐かしみました。

 

最後にフランス映画「田舎の日曜日」(1984年カンヌ映画祭監督賞)をKに勧めました。1912年、パリ郊外に年老いた画家が住んでいます。秋晴れの日曜日、汽車に乗って新興サラリーマンの一家が父である画家を訪ねて来ます。遅く一人、新しい車でやってきた娘は実は失恋したばかりでした。娘は父を川辺の賑やかなカフェに誘います。カフェで娘は父の手を取って立ち上がり、楽師のワルツに合わせて踊ります。
哀愁をおびた素朴なワルツは、100年前の現場から聞こえてくるようです。ルノアールが描いたような人物たちが居るこの場面、不思議と胸が熱くなります。ほかにフォーレのピアノ5重奏曲が落ち葉や過ぎゆく時を慈しむように奏でられます。やや退屈かもしれませんが、忘れられた過去の人々と時間を共有できる不思議な映画です。

 

     
夕刻の智美術館入り口 付近の桜坂
   
        

膝掛けと温風/桜坂のカフェ

国立新美術館の壮大なカフェ
   
             

智美術館/切符

ピカソ展/絵はがき

   

「やはり」の二題

2008年12月12日(金曜日)

 【その1:児童の肥満】この1,2年保育園と小学校の健診で肥満の子どもが減っているのでは、と感じていた。それが今日の新聞に、5~17才の児童にみられる肥満の減少傾向が書かれていた。文科省の報告だった。
諸外国でも子どもたちの肥満は欲求、背景および習慣がからむ困難な課題だ。しかし日本で家庭や学校、保健・医療などが粘り強く取り組んだ成果が出はじめたならとても嬉しい。

 

 【その2:トキ今朝、トキの半ば強制的な放鳥は問題だったのではないか,という記事があった。放鳥当時、小生もそう思った。衆目のなか、セレモニーを伴う追い立てるような方法は手荒だった。そのためパニックに陥って、大切な群れを作れなかった懸念が残る。次回からは鳥の気持ちにそった自然な方法が期待される。両者の違いは、ハードリリースとソフトリリースと呼ばれるらしい。

 

それにしても可哀想なことに、ただ一組カップルを作ったNo9と15のうちNo15が姿を消している。落鳥か、、、。空を飛ぶべき鳥が、地上に横たわり冷たくなるのはひとしお悲劇的だ。麗しいトキであればなおさらに。

 

※果敢に海を越え、新潟県胎内市→関川村と移動したNo2は、さらに新潟市まで南下した。豪雪を避けて生きるには、南西へと移動しなければならないのだろう。猛烈な西風との戦いになる。トキならではの優れた知恵を生かして頑張って欲しい。この冬は当地上越市のやや暖かい海ぞいに来て定着すればと、密かに期待している。

※一応ファンにさせてもらっているNo11は赤泊地区で元気にしているようだ。5,6キロ先に仲間がいるのだから集まればいいのに。
そうしないのは、もしかしたら集まったため一度に危機に瀕するより、ばらばらになって生き残りにかける野性の戦略だろうか?

日曜日

2008年12月8日(月曜日)

 すでに昨日のこと、荒れるだけ荒れた後の降雪、その後お天気は快晴となりました。
昼前、芝居を計画しているグループが美術館のカフェに集まってミーティングがありました。雪を眺めるカフェはなんとも爽やかでした。
公演は2010年春に内定。少しでも公的な助成が受けられるように、それぞれの分野の構造をしっかりさせていくことを話し合いました。少々辛いことですが、今度も台本は小生の担当です。

 

タイトルは「蜘蛛ケ池」。現在8場を想定して3場を書きはじめたところです。前回の公演から10年、皆も年を重ねました。1年半先の公演まであっという間でしょう。キャストは多くありませんので、一人一人が重い役回りになりそうです。

 

執念の田作りの母子、突然に現れる大蜘蛛、長い不在の後に戻った父、観音の救出と死、見守っていた僧、嫁入りの幻想,,,。こんな場面を考えています。公演まで複雑なステップがありますので先行きは大変に違いありません。

 

午後2時から、医師会の総会、肺癌の特別講演、多くの医師が意見を述べた症例検討会、そして忘年会がありました。約5時間、かなり疲れました。医師会が少しずつ変って行くように感じました。
同じ上越市ですが会場の高田には全く雪がありませんでした。

 

雪化粧をした当地の頸城(くびき)平野

 

 

カフェの眺め

 

イルミネーション

2008年11月25日(火曜日)

 樹下美術館の前にスタッフがクリスマスイルミネーションを飾りました。夕刻から降り出した雨のなか静かで美しい。連休に来訪した大切な身内が午後に帰った。どうかまた元気で頑張ってほしい。

 

 

   

せん妄

2008年11月19日(水曜日)

 ひどく気温が下がってみぞれ交じりの荒天となった。いよいよ越後の冬の始まりだ。荒れ模様の夜8時すぎ、あるお宅から電話があった。ショートステイを利用中の夫が、昨晩から寝ないで騒ぎ出したので家に帰された。家でも妄想にとらわれて大声や怒鳴りが止まず、診て欲しいという訴えだった。

 

ご本人は、肺疾患のため在宅で酸素吸入をしている高齢の男性で、奥さんと二人暮らし。酸素療法では鼻に付けるチューブが鬱陶しくて、外したがる患者さんは少なくない。しかし一旦外すと酸素不足のため、特に高齢者では意識の濁りを生じてひどい症状が現れる場合がある。今回の方は施設でしばしばチューブを外し、介護士さんも苦労したようだ。この日ご本人は、介護士さんが付けたチューブを噛み切ろうとして、自分の指まで噛んで負傷したという。

 

ところで浅い睡眠や一定の酸素不足,発熱、時に薬剤で生じる意識の混濁・混乱はせん亡と呼ばれる。かって99才のおばあさんは、庭に何十匹ものサルが攻めてきたと言って、長いホウキを手に一人で立ち向かった。ひるね直後のせん妄で、夢と現実の混乱が鮮明な幻覚を生んだと考えられた。往診に伺うと、庭に面したガラス戸はすべてめちゃめちゃだった。家族は呆気に取られていたが、ふとんに戻ったご本人は、サルを退治したと意気揚々だった。普段寝てばかりいる老人でも、強い観念に襲われると信じ難いエネルギーを発揮することに驚いた。

 

今夜の電話の向こうでは怒鳴り声がして、奥さんの声は震えていた。ふだん電話の背後に聞こえる怒鳴り声や泣き声、あるいは悲鳴は緊張する。今夜は、出掛ける前に「優しくそばに座ってみてください。そしてそっとチューブを付けてください。駄目でもくりかえして」と告げた。患者さん宅に着いてみると家は静かだった。「いま寝ました」、奥さんの声がまだ少し震えていた。チューブはちゃんと付いていた。数十時間も眠っていなかったのだ。本人は布団にくるまり丸くなって眠っていた。
 医療には薬の要らない場合もあろう。何かあったらまた電話して、と告げて出た。あられ混じりの風雨のなか、奥さんが傘を差して車まで付いてくださった。

菱ケ岳

2008年11月1日(土曜日)

 午後から晴れ間が出ましたので母と上越市安塚区にある菱ケ岳を見に行きました。以前から続いている秋の年中行事です。昔はブナ林の道を杖を頼りに100メートルを歩いた母も二度の骨折で今は車椅子。さらに、山の紅葉を見るには上を向く必要があります。しかしこれが年寄りに辛いので,おのずと車中で昔話が続きました。 以前、昔話はイヤでしたが、今はいくら聞いても飽きることがありません。

 

たとえば、母の故郷である肥前大村藩の奥方が道中で湖畔に咲いてる花を所望した。お女中が花を取りに向かったがそれきり帰らなかったという。水に沈んだの?と聞けばそうかも知れないと言い、何処かへ逃げたの?と聞けばそうかも知れないという答。こんなゆるい問答が楽しく、大村藩というエキゾチズムも新鮮なのです。
別の話では、生家の近くにほこらがあって、寝小便にご利益があった。ある日、五つ違いの幼い弟が、たまたまほこらに参る妙齢の女性を見た。女性が帰るのを待って弟がほこらへ行ってみると24ヶのおだんごが供えられていた。そこのほこらでは年の数だけお団子を置いて願をかける。弟は得意げに知らせたが、姉である母は気の毒で弟のようには笑えなかった。

 

こんな話を沢山聞いて帰りました。3時間余の道中の小用を心配して、妻は予め母の尿パットを特別大きいものにしましたので助かりました。帰ってから「ずいぶん私も惚けたでしょう」と93才の母。確かに自分の話はよくできるが、人の話の理解はかなり落ちてしまった。しかし私はそれで十分だと思っています。

 

NPOゆきのふるさと安塚の平野さん、以前ご案内いただいた花をまた見てきました。棚田の整備も進みましたね、頭が下がります。

       
菱ケ岳 遠く米山
   
    
リンドウ 梅鉢草(ウメバチソウ)

トキが日本海を渡った?

2008年10月29日(水曜日)

 放鳥後のトキについて驚くようなニュースが昨晩ありました。一羽のトキが海を渡り本土の新潟県胎内市で見つけられたらしい、ということでした。個体の識別に染められている色彩マークも見られ、佐渡でこれまで未確認だったうちの一羽の可能性があるそうです。
胎内まで直線距離で90キロと聞きましたが、にわかに信じられませんでした。地図でみると胎内市は放鳥された佐渡のほぼ真東、地図に向かって右真横にありました。相当な距離です。季節風である一定した西風を使って渡ったのでしょうか。本土を目指して真南(地図で真下)に向かうように飛べばうまく西風に乗って成功した可能性があります。このような飛翔はかなりの揚力が得られ、抵抗も少ないからです。

 

本当なら若鳥らしいナイストライ、素晴らしいことです。しかし一羽では寂しいでしょうし、成長や結婚?なども色々心配です。まず果たして事実はどうなのでしょう。

可愛い園児

2008年10月24日(金曜日)

 長い晴天がようやく雨に変わりました。午後1時から近くの保育園で健診をしてきました。100人も続けて診ますと聴診器でひどく耳が痛んできます。しかし子どもたちのまぶしさは心地よいものでした。
10年前に比べてゼロ才児がとても沢山になりました。この小さな児たちの健診の終わり頃、年上の児たちが入室してきます。すると入って来た小さなお兄さんお姉さんは、保育士さんに抱かれているゼロ才児を次々に撫でたり頬ずりをしたり、抱こうとしました。自分もまだ赤ちゃん風なのに下の児を可愛がることが嬉しくて仕方がないという顔でした。

 

子どもたちの情景をみていて、皆ずっとこんな優しい人間でいてほしいと、祈るような気持ちにさせられました。

 

秋雨の保育園

頑張るトキたち

2008年10月18日(土曜日)

 さる9月25日の放鳥から3週間が経ちました。昨日のテレビは、田を突っついてドジョウを食べるトキの映像をしっかり放映しました。とても見事な映像でした。この時期のドジョウは田にもぐっているそうです。トキはくちばしを泥の中深く入れて器用に餌を捕っていました。10分間に12匹も食べたということ。あの長く曲がったくちばしが餌とりに好適なんですね。それに人工的な餌場であるビオトープに飛来したことも頼もしい話題でした。この勢いだと餌場をもっと増やさなくては、と地元の方が仰っていました。

環境省の放鳥トキ情報は毎日更新されています。送信機を付けたno1,4,6,9,11はしっかりと確認されてます。また付けていない13,15も極めて元気のようです。しかし付けていない残りの3羽のうち二羽の安否が確認されていません。やや気がかりです。

 

一方でこれまでばらばらだったトキが、2羽いっしょに居るところを目撃されたと報道されました。群れはトキの命。うれしい知らせでした。

 

Photo
私が好きなno11。よく頑張っています。
 (環境省 関東地方環境事務所・佐渡自然保護官事務所のページより)


私のトキノート。毎日トキ情報を見て付けています。

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