手こずる二つの用件。

2012年10月28日(日曜日)

今夜は医療の日頃のこと、なかんずく往診の事を書いてみたい。

 

以前は重篤な心筋梗塞や脳出血なども往診依頼された。

 

かつて早朝の心筋梗塞で患者さんの救急車に同乗した。途中苦しい呼吸の中で何度も脈が無くなり、昇圧剤の静注を繰り返した。なんとか病院に到着できたが、専門医の到着は未だだった。その時は病院ナースに基礎的な指示をお願いして帰った。(病院に上がり込んでオーダーを出すなど、無謀なことでしたが、この方は助かりました)。

 

往診依頼の電話の際、緊急性の高いケースでは救急車も呼んでください、と伝えて出かける。しかし到着するとすでに亡くなっていたり、車の到着まで持たなかったケースもあった。脳出血(恐らく蜘蛛膜下の大出血)の女性は蒼白となり嘔吐し、悲鳴とともに激しく頭痛を訴えた。直後に身を反らせ強い痙攣を繰り返して息を引き取った。救急車は間に合わなかった。

 

真の救急に向けた病院の対応、地域の理解など全体が進み、今では上記のようなケースは直ちに救急搬送されている。わずか10~15年におけるめざましい進歩だったと思う。

 

ところでさほど頻繁ではないが往診用件で手こずるものが二つある。一つは鼻出血(鼻血)でもう一つは尿閉だ。

 

往診携行物往診の一式。カルテのほか、左:主に内科用件の用具、手前:AED、
真ん中:お薬、右:応急処置用具と点滴類、点滴スタンドは常時トランクに。

 

いずれも夜間の依頼が多い。耳鼻科、泌尿器科とも病院医師が少ない科である。疲れている医師を煩わせたくないが、患者さんはおびえ、あるいは震えている。なんとかしなければならない。

 

鼻出血ではアドレナリンを浸したタンポンを詰め、氷で冷やし圧迫し、止血剤も注射する。夜間一時間も掛かってようやく止ることがあった。ご家族が心配して見守るなか、再び出血しないよう抜き足差し足、そーと帰った。

 

次は尿閉で、カテーテル挿入による導尿が必要となる。しかしどうしても奥がつかえて入らないことがある。患者さんは脚を振るわせて辛そうにされ、あまつさえ出血がはじまることも。
申し分けありません、と夜の病院にお願いしたことが数回あった。病院でも入らない場合は、外部から孔を穿ち、直接膀胱へ管を入れる。お一人はそのような方法によって今日もお元気で過ごされている。

 

さて今週末の夜は超高齢者の尿閉だった。以前外科医に聞いた通り十分麻酔ゼリーを使い、時間を掛けて通した。結局1000mlも出て、ご家族とともに驚きかつ喜んだ。週が明けたらカテーテルを留置しなければならない。

 

いつしか現役とは言えない年になった。夜間などは不安を払拭できないまま出かけ、病院さんにも助けられた37年。文字通りあっという間だった。私が知らない患者さん・ご家族のご苦労も沢山あったにちがいない。

2012年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

▲ このページのTOPへ