窓字、袋字そして窓絵、齋藤三郎の展示作品から。

2021年8月29日(日曜日)

前回に続いて齋藤三郎の焼き物の話です。
現在のテーマは書を中心とした展示です。文字をそのまま書いたもののほか、器に丸や菱などの枠を開け、その中に文字を書く「窓字」がよく見られます。
また文字の輪郭を縁(ふち)取る「袋字(ふくろじ)」も好んで書かれています。

窓字と袋字。
以下、展示の一部からまず窓字を挙げてみました。

 

色絵湯飲みの窓字。丸い窓に春・百・花の三文字が書かれています。

 

鉄絵手付き鉢に二重丸の窓字で「客来一果」。

 

鉄釉壺に二重丸の窓字で「富」の窓字。反対側に「貴」と書かれています。

 

染め付け湯冷ましと煎茶茶碗の丸い窓に「忘却」と「香」の窓字が見えます。

次ぎに袋字です。

湯飲みの「忘却来時道」の袋字の部分です。
まず臈(ろう)で文字を書き、上から藍の釉薬を掛け、
浮き出た文字に縁取りをして袋字にしたようです。

 

文房具揃えから良寛詩「吾与筆硯有何縁」の袋字。

 

以下の窓は菱型の窓を開け、袋字が書かれています。

 

色絵柿文鉢「秋収冬藏」の袋字の窓字。

 

色絵椿文鉢「露結為霜」の袋字の窓字。

何か呼び方がややこしくなりましたが、いずれも手の混んだ作業ではないでしょうか。
文字の縁(ふち)を囲むのを袋字と呼ぶとはなるほどと思います。それぞれの文字や部首を崩せば袋になりますね。

 

ちなみに窓を開けて中に絵を描く手法を「窓絵」と呼びます。
以下展示の中から窓絵の一部を掲載しました。

蝶の窓絵の染め付けタ湯飲み。

 

椿の窓絵の急須。
赤い地に釘で良寛の詩も彫られている。

 

「忘却来時道」の額に水注の窓絵。

 

素早い筆さばきで丸や二重丸を描き中に文字を書く。
早くても乱れない。
そのことも味や見所であり、齋藤三郎の手筋の良さに驚かされます。

以上、何か呼び方がややこしくなりましたが、いずれも手の混んだ作業ではないでしょうか。
窓字、袋字、窓絵は“皆に喜んでもらいたい”という齋藤三郎一流の「もてなし」の現れではないかと思っています。

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