館長のトイレの絵 ヒロハテンナンショウ(広葉天南星)の実 

2011年10月3日(月曜日)

本日から樹下美術館のお手洗で、正面の鏡の脇に掛ける絵を替えた。赤く少々毒々しいヒロハテンナンショウの実です。作品ノートを見ると2002年10月終了と書いてあった。

 

2002年秋、母を乗せて紅葉を見に旧安塚町の菱ケ岳へ行った。菱ケ岳の登山口まで行くと大きな丈のブナ林があって、道は平らとなり車椅子を押すのにちょうど良い。

 

その日、よく晴れて見上げる山の紅葉は素晴らしかった。もう二つ三つカーブを曲がると登山口という所で「おしっこ」と母が言った。きついカーブの左端に車をとめ、車の向こう陰で用を足してもらうことにした。用の間、道をブラブラ歩いてみた。茂みで見つけたのがモチーフとなった赤い実だった。

 

ヒロハテンナンショウ 
一片だけ葉を描いたが、実は一枚から数葉に分葉したものの一つだった
(A3サイズ)

 

持ち帰って描いてみることにして折らせてもらった。用を終えた母に見せるとワーッと言って驚いた。
調べると、ヒロハテンナンショウ(広葉天南星)というマムシグサと同種の植物だと分かった。実の形状に驚かされたが、宇宙の南の星というスケールの大きな名にもびっくりした。

 

名前の立派さに畏怖のようなものを覚え、俄然描く意欲が沸いた。スケッチも彩色もよく進み比較的短時間で仕上がった。

 

さて本日トイレに掛けましたが、毒々しさはにはある種消毒めいた作用を感じます。それにしてもあの日、母がおしっこ、と言わなければこの絵は無かったことでしょう。

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