「ゴッホとゴーギャン展」から。
今年の閉館まであと5日、ゴッホとゴーギャン展を
観てから5日が経った。
去る18日に終了した同展の東京都美術館へ、15
日午後急いで行ってきた。
偉大な芸術家について書くのは、気が引けるがなに
がしかは書かなければならない。
↑展覧会カタログ表紙はゴッホの「ゴーギャンの椅子」。
去って行ったゴーギャンが残した椅子を敬意と
愛おしみを込めて描いている。
強い個性の二人は1880年代に南仏アルルで共
同生活を送っている。
冒険的な試みは、3ヶ月経ずして終わるが、議論
を重ねた日々は1世紀も過ごしたように感じるとゴ
ッホが述べている。
展覧会では、決定的な別れをする二人の互いへ
の敬意が作品をもって示されていて、お土産のポ
ストカードなども買って、ほっとため息をついて美
術館を後にした。
資金難に苦しみながら描き続けてた二人の絵画
は、しかし素晴らしい魅力を放つ。
暗い館内で観た南仏のまばゆさ、迫り来る人物画、
可憐なアーモンドの花の一挿し、それらに見られた
ゴッホの心の波と情熱は忘れ難い。
ゴーギャンはゴッホより詩的であり、力強い平面と
赤が心地良く脳裏に残った。
二人は逃れがたいキャンバスの二次元の上に如
何に三次元の世界を、あるいは異次元の物語を載
せるかで悩む。
しかし自然の外気とジャポニズムあるいは同時代
の人々の手法を手がかりに苦闘しついに成功した
のではないだろうか。
わけても浮世絵版画の潔い二次元性は、平面表
現として少なからぬヒントになっていたと思われる。
特筆すべきは二人の異国への強いあこがれであり、
ゴッホの日本に対するリスペクトは尋常でなく、同
一化を願うほどであり、ゴーギャンのそれは南国の
原始性なかんずくタヒチだった。
芸術家の探求にとって新鮮さと刺激、そして憧れは
どんなに貴重だったか、ことごとく知らされる一方、
何処へでも行けて何でも触れ得る現代の画家たち
は何に動機づけられ、熱中するのだろう、と考えさ
せられた。
↑二人の絵はがき。
上はゴッホ「泥炭船と二人の人物」で暗いがと
ても安定感があり、下のゴーギャン「ブドウの
収穫、人間の悲惨」は不思議でかつ魅力的な
作品。
(恥ずかしながら私の唯一の海外旅行は40年
前、ゴーギャンへの憧れによって、タヒチでした)
ゴッホと言えば「わだばゴッホになる」と述べた
とされる棟方志功が浮かぶ。
時代は異なるが、棟方はゴッホが憧れて止ま
なかった日本人のしかも版画家であり、運命的
な関係を感じる。
ゴッホは心を、棟方は眼を病んでいるが、時間
の位相は異なれ、ともに芸術家として成功して
いる。
二人に共通していることの一つに手紙がある。
ゴッホは、弟テオやゴーギャン、そして周囲に常
に詳細な手紙を書いている。
それは芸術や医学においても貴重な資料であ
ろう。
棟方も熱心に手紙を書き、上京後の赤貧生活に
於いても切手とハガキだけは必ず手許にあった、
という。
手紙、日記、研究、心の平衡、書くことには何らか
意義があり、次元は低いが拙ブログもなるべく続け
たいと願っている。
展覧会を熱心に勧めて下さった方に感謝していま
す。
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