青い鳥その3 「子供」と「光」が主役のとても良い本でした。

2014年11月11日(火曜日)

「ああ、早く明日がこないかなー」
ふと耳にした小1の孫Kちゃんの言葉から始まった私の「青い鳥」巡り
その感想文を二回も書いてしまい、面はゆいばかりです。
本日はその3、最終回にしました。

さてチルチルとミチルの1年に及ぶ青い鳥探しの旅(冒険)はクリスマスイブの夢でした。
しかし第12場(最終章)で、目ざめた兄妹に回りのもの全てが生き生きと美しく輝いて見え、
両親に強い愛情を覚えるのでした。
あまりの変わりように両親がいぶかるほどだったのです。

しかし旅の目的であった幸福の「青い鳥」を持ち帰ることは出来ませんでした。
ただ軒下の鳥かごを見ると、前からいた鳥がわずかに青みを帯びているのに気がついたのです。

ためしにそれを隣の病の娘さんに渡しますと、奇跡のように立ち上がり歩き始めるのでした。
ところが一瞬手を離した隙に鳥は飛び去ります。
チルチル「いいよ、泣くんじゃないよ。ぼくまたつかまえてあげるからね」
(舞台の前面に進み出て、見物人に向かい)
「どなたかあの鳥を見つけた方は、どうぞぼくたちに返してください。ぼくたち、幸福に暮らすために、いつかきっとあの鳥がいりようになるでしょうから」

波乱に満ちた幸福探しの後にしては実にあっさりした結末で、この言葉で戯曲「青い鳥」は終わります。
物語のテーマは何だったのでしょう。

本に、運命と時間を背負って生まれた人間はとにかく進まなければならない、と書かれていました。
生きながら陰や恐れや病や戦の危機にさいなまれ、目の前の虚栄や金満や怠惰に迷い、
自らも自然を食する人間。
はたして幸福はどこにあるというのでしょう。

しかし著者は、幸福は探し回るものではなく自分たちはすでに囲まれていると述べます。
そしてそれが見え、気づくためにあるものこそ「光」であるというのです。

劇中第11場、別れたくないと泣くチルチルに「光」が言います。
「いい子だから泣かないで、わたしは水のような声は持っていないし、ただ音のしない光だけなんだけれど、
でも、この世の終わりまで人間のそばについていてあげますよ。
そそぎ込む月の光にも、ほほえむ星の輝きにも、上がってくる夜明けの光にも、ともされるランプの光にも、
それからあなたたちの心の中のよい明るい考えのなかにも、いつもわたしがいて、
あなたたちに話しかけているのだということを忘れないでくださいね」。

201301「青い鳥」 モーリス・メーテルリンク著 堀口大學訳 (株)新潮社昭和35年3月20日発行
平成18年11月30日50刷改版 平成25年11月10日57刷

青い鳥は1908年発表で、メーテルリンクは1911年にノーベル文学賞を受賞しています。
我らが堀口大學の、子供への思いにあふれる訳もとても良かったのです。

2014年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

▲ このページのTOPへ