「絵付け陶芸三人展」からその1 正木春蔵さん。

2023年10月21日(土曜日)

筆者の幼少、父は齋藤三郎の陶芸作品に夢中になり収集しました。
器は飾られたり日常の食器として使われ、暗さが漂う家を明るくし、観る喜び食べる楽しみをもたらしました。父母はことある度に器を褒めるので私達子供は器ばかりか齋藤さんまで大好きになりました。

斯くして齋藤作品は幸せの器として脳裡に焼き付きました。ところが昭和56年氏が亡くなると、家に火が消えたような寂しさが漂うのを感じました。その後歳月が経ち亡き齋藤さんに代わる絵付け陶芸家と巡り会いたいと思うようになりました。

この度の「絵付け陶芸三人展」はそんな気持で店や窯、あるいは通販やネットを通して3,40年にわたり求めた三人の作家さんの作品展です。

以上の三人では正木春蔵さんが最初の作家さんです。ある抹茶茶碗名鑑で見た色絵の繊細な作品が頭から離れず、工房を訪ねたのが始まりでした。

石川県の山代温泉は魯山人も逗留した旅館白銀屋(しろがねや)さんのご子息で、近隣に「山背陶房」を営まれていました。同宿に泊まるなどして数回窯を訪ね夕食をご一緒したこともありました。

山に同化したような穏やかさの中に熱い情熱を秘めたお人柄。加えて近隣の作家とともに一帯の陶芸を盛り上げようという意思を明確にされているのが印象的でした。

また道中一緒の時「この森にはエビネが自生しています」、食事では「古唐津の盃が好きな陶芸家が多いようですね」と仰ったのが耳に残っています。

その後東京は六本木「サボア・ヴィーブル」という店でよく正木作品を扱う事を知り上京の折に立ち寄り、店内一段と輝く氏の作品を手に取らせてもらうようになりました。
都内では他に数店が同氏作品を扱っていましたが、店主の人柄から同店に寄りました。

中国風の大きな染め付け楕円皿。
牡丹と獅子が描かれ、
長径30㎝以上はあります。

 氷裂模様が入った大きな器。
尊式に膨らんだ胴に麗しい動物。
なんておしゃれなのでしょう。

美しい蓋が付いた瓶の
独特の間と清々しさ。
多様に描き込まれた盃。

急須と湯飲み茶碗。長い人気を誇るねじり文の湯飲み。向こうに陶器と磁器の大きな急須、中ほどに染め付け急須2器がある。
正木作品は6個の展示台に15作品を出品しています。

上掲尊式の大きな器は30年近く前、ワインブームの折、近隣のDr4人がワインを持ち寄る集まりで、ワインクーラーとして活躍しました。2点ともサボアで求めたと記憶しています。
氏の作品は新鮮なうえ余裕あるいは間や遊び心があり、美しくも楽しい使い心地があります。

遅くなりましたので本日はここまでとさせていただき、続きは次回とさせて下さい。

終日厳しい風雨のなか来館された皆さまに感謝申し上げます。
「今回の展示会の図録は無いのですか」とお尋ねされたお客さま、無くて本当に申し分けありません。それに代わりまして、幾分の詳細をブログに書いてみようと思った次第です。どうか宜しくお願い致します。

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