「絵付け陶芸三人展」からその3 黒岩卓実さんの赤絵。

2023年10月28日(土曜日)

小雨ときどき驟雨激しかった土曜日。午前はコロナとインフルエンザのワクチンで一時忙しかった。午後珍しく一時間ほど昼寝をし、読書してから美術館でサラダを食べた。

さて「絵付け陶芸三人展」のご紹介、最後の本日は黒岩卓実さんです。前の正木春蔵さん、鈴木秀昭さんと同じように齋藤三郎を追いながら出会った織部と赤絵の作家さんです。

樹下美術館の開設近い頃、新潟市の方から頂いたのが始まりでした。速筆の赤が醸し出す上品さが魅力でした。

主に轆轤を用いない「たたら」と「手びねり」による成形。器の地は肌色を帯び驚くほど軽く、成形する過程の掌や指の跡が窺えて親しめます。
地色に映える赤で線と模様が描かれ時に緑や独特の青と金が添えられます。配分の良い線とともに模様の花や動物あるいは娘さんが気持ち良く描かれます。

以下は展示中の作品からです。

入ってすぐの赤絵大鉢。縁の凸凹は抹茶茶碗でいうところの「山道」でしょうか、楽しい変化です。胴まわりの動物は中の花蝶とともに器全体を生き生きとさせています。

赤い檜垣模様のふちの三カ所に緑と金彩が施された向付。肉も野菜も美味しく盛られます。

向こうに赤絵の湯呑茶碗、手前に菊の模様でしょうか緑のドットがアクセントの小皿です。
湯飲みの軽さと楽しさは誰もが「ああ」と仰います。小皿は豆、羊羹、水菓子などが映え、たびたびブログにも登場しました。茶碗には轆轤目があります。

古典的な印象の比較的大きな深鉢。

黒岩作品は入ってすぐから左回りに6台の展示台に合計8作品を展示しています。
柔らかさ、軽やかさ、爽やかさなど作者独特の美意識が現れる作品は日用に、装飾に楽しい器ではないでしょうか。

黒岩卓実さんは1947年福岡県大牟田市生まれ、岐阜県は美濃地方の多治見に「たくみ」窯を築かれました。
度重なる貴重な受章歴があり、作品は東西の有名デパートほか全国各地の陶芸店、ミセスなど婦人雑誌など誌上でも人気を博しています。
ちなみに日本の焼き物の60%をほこる美濃地方は荒川豊藏、加藤卓夫ほか人間国宝を輩出している一大産地です。

さてこれまで十分ではありませんが、正木春蔵、鈴木秀昭、黒岩卓実の三氏による絵付け陶芸作品を眺めてきました。長く親しんだ齋藤三郎亡き後、代わる絵付け作品を求めて集めた作家さん。

東洋陶芸を源流として独自の九谷エッセンスを現した正木さん。

器に宇宙の色彩と陰影を満たし、形状にも迫る冒険家鈴木さん。

織部に連なる赤絵に健やで上品な生活感を求められる黒岩さん。

このたびは三者三様の個性ある絵付け陶芸作品の展示です。今日の人気を得るまでの努力の膨大さは私などには想像が出来ません。
おごらず一貫した丁寧な姿勢(作品価格も含め)も共通しているように思うのです。

最後にわが齋藤三郎もそうでしたが鈴木さん、正木さんとも源流が九谷というのも不思議な縁です。そこに美濃が加わることで小ぶりな場内に幸福な膨らみが生まれているのを感じています。

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