充実している「生誕110年 齋藤三郎 展」 興味深い「染付楼閣山水図菓子器」と署名。

2023年7月20日(木曜日)

最近ブログを空ける日が多くなり、過日といい中4日サボってしまった。写真に続き自らの絵画までも展示する初めての試みのストレスは想像以上で、今になって疲れが出てきたものと振り返っている。

本日はこの間二度訊ねた小林古径記念美術館の「生誕110年 齋藤三郎 展」を書いてみた。

今月中ばから10月9日まで続けられる同展はロングランである。
齋藤三郎について、当地では何年に一度没後あるいは生誕などのメモリアル展がどこかで開催される。いずれも立派な展覧会だったが、この度の生誕110年展は同館開館後初めての齋藤三郎であり、作品内容、展示方法、作品および人物の解説キャプションが充実し、図録も良く掘り下げられ氏に関するこれまでの展覧会中、群を抜く充実を感じた。

準備したスタッフは大変だったろうと考えられる。だが優れた芸術家とその作品に熱く関わることの得がたい幸福が想像された。

入り口の垂れ幕。

 

新潟県立近代美術館収蔵の名品と目前で再会する喜びと多方面から見る齋藤三郎の世界を堪能。中で最も眼を奪われたのは以下昭和12年ー13年作で長瀬幸夫氏所蔵の「染付楼閣山水図菓子器」だった。

まず器類では見たことが無い雪輪文の造形に虚を突かれる。さらに驚くほどの速筆のうえ、図柄は直前まで師事していた同時代の富本憲吉の染付作品と完璧に同一化、あるいはそれをも凌ぐばかりの趣と自信が感じられ、三郎の修行の凄まじさを思わない訳には行かなかった。

同作品の裏面。
上下に竹林が描かれている。

驚きの一つ、落款(署名)。

この「齋」の署名は後の髙田におけるものからみると非常に奇異に見える。書も秀でた三郎を思えば何という風変わりな署名だろう。一方樹下美術館が収蔵する戦前および戦後髙田時代のごく初期作品にも以下のように上掲のものと似通った署名がある。だが染付楼閣山水図菓子器のそれは特に変わったものとして心に残った。

樹下美術館収蔵作品の戦前時代の署名。

 

戦前の別作品の署名。

 

戦後髙田開窯初期の署名。

以上の3署名も、言葉は悪いが後に比べれば変わった形状をしている。もしかしたら能書家の三郎なりに我ただ一人のサインを研究してのことだったものか。いま存命なら、どのような訳でここに到ったのか是非訊ねてみたいところだ。

参考までに、以下の2写真は髙田に於ける昭和20年代作品によく見られる署名。

 

素早く流れるように揮毫されている。

以上はなはだ僭越でしたが「染付楼閣山水図菓子器」の驚きと感想を書かせて頂きました。

 

同展帰路の南掘のハスにしばし清涼を覚えました。

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