2022年1月24日

小林古径記念美術館行き 齋藤尚明宅訪問。

2022年1月24日(月曜日)

雪も風も無い穏やかな昨日日曜日、小林古径記念美術館と齋藤尚明氏(二代陶齋)宅を訪ねた。

このたび古径記念美術館の記念室に「少女」が2枚あり、入り口の1枚は初めて観た。隣の日傘を差した「少女」は以前からの馴染み。両者シチュエーションと年令は異なるが同じ少女を描いているように思われ、とても可愛いと思った。

 

「少女」

同館で今年1月4日~3月13日に開催されているコレクション展「白の世界」を観た。
「白の世界」は三部に別れている。「色彩としての白」の部で倉石隆の「さとうひさこの像」および「余白・空白の白」の部に「Kの肖像」および「粉雪が舞う」があった。
いずれも一昨年樹下美術館が貸し出しを受けた大作で、冴えた照明のもと一段と輝いていた。

斎藤真一氏の「明星 二本木の雪」の構図と雪原の瞽女さんおよび雪山の素晴らしさに、あらためて釘付けになった。
澄み渡る宵の頸城野。中央を外した右遠く三人の瞽女さんが歩み、行く手の空低く大きな星がひとつ現れている。瞽女さんたちはしんとした広大な雪原を温める小さな心臓のようだった。
これを詩と言わずして何といえば良いのだろう。
雪をいただく連山のグラデーションは素晴らしく、一体どうやって描いたのか、穴が開くほど観た。万一描き方を教えてもらっても、当然ながら絶対に描けない。

ところで、かって現代美術を先駆けた多摩美術大学教授末松正樹氏を中心に舟見検二、矢野利隆、賀川孝、倉石隆、筑波進ら上越出身者が多く加わった当県県人による主体美術協会のグループ発表展「ネージュ(フランス語で雪)」があり、長く継続された。
1972年4月に東京で第一回の発表展があった秋、それを上越市立博物館開館の特別展にすべく市川信次館長が企画。作品の到着まで終了した段階で突如中止になる出来事があった。
本日の会場の一隅にそれを知らせる当時の新聞が掲示されていた。
開催を前に上越市議会が、博物館条例には美術展の開催が書かれていない、という理由で駄目を出したのだ。美術館は博物館のジャンルに含まれるが、当時その解釈が無かったとは思われない。

政治、行政が文化芸術に否定的な姿勢を特権の如く行使し、立場を愉悦するようなことはあってはならない。芸術に対するそのような公の介入は豊かであるべき文化の存立に反して貧しい。
作品展は後日髙田のやま江家具で開催されたというが、昔話にしても悲しい歴史だ。

今回招待券を頂いた掘川紀夫さんの「Snow Performance ’85-5J」も面白かった。自ら雪原に身を投じ、一瞬にして千手観音あるいは鳥に化身されている。どのような時間帯だったのだろう、しっかりと陰影が付き成功している。懐かしい童心まで蘇った。

齋藤三郎さんがかってのお弟子志賀重雄氏に当てた書簡は、こまやかな愛情にあふれ胸打たれた。お二人とも白い器が出品されていた。それぞれ風土の色が滲み心和んだ。

こまやかさが隅々まで良く行き届いたコレクション展だった。

この後、久し振りに齋藤尚明氏宅を訪ねた。
今年樹下美術館の催しに関する大切なお願いが目的だった。その場で快く引き受けて頂き感謝に堪えない。
勝手に拝見した作品展示室の市松模様の色絵水指はとても良かった。
氏は物識りで話は面白い。京都の修業時代の茶の稽古における、高きゆえ自由な師範の姿勢は特に興味深かった。

 

今夕は半たまのラーメン。
麺はご近所の素人さんの作ながらとても美味しい。

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