2021年6月2日

「Viva Video!久保田成子展」を楽しく観てきた その2。

2021年6月2日(水曜日)

昨日に続いて新潟県立近代美術館の「「Viva VIdeo!久保田成子展」その2です。
特に興味深く観たのはヴィデオ彫刻と名付けられる立体作品で、作品環境をともにするなどインスタレーションの側面もあり楽しめました。

以下は昨日の続きで、まず「三つの山」です。

 

三つの山に関係したドローイング。
My Father’s Countryとタイトルされている。
久保田さんの故郷、新潟県の山の印象。

 

「三つの山」は奥の二つのピークと手前の噴火口を有する三つの造形からなっている。
奥の山は体内を見せるように2カ所ずつえぐられたような構造で、
様々な鏡面がモニターを囲み、映像をさらに複雑に映し出す。

手前の噴火口。
モニター映像と写り込む人が混在して華やかな万華鏡像になる。
山と人が歴史を共有しているイメージが浮かぶ。

 

続いて「ナイアガラの滝」。

滝の水音が続く水面は細かく波立ち、滝の裏側の造形物とモニターと照明を美しく映し出す。
非常に爽やかな場所になっている。

 

 

滝の裏側を覗いてみた。
反射板でもある構造物とモニターが取り付けられ、照明
と映像が混み入った光の世界を創り出している。
ここを観ているだけでも面白い。

さらに「スケート」。

 

 

 

ロボットのようなスケーターがクルクル台上を回っている。
美しく反射される照明からスケートのファンタジーが伝わる。
角度によってポーズが異なって見える。
ポーズが決まるまでかなり試行錯誤があったのではと思った。

 

最後に「韓国の墓」。
1984年、パートナーであるナム・ジュン・パイク氏は34年振りの帰国を果たした。その際の墓参のイメージから制作されている。

 

 

墓である半球から大小の突起が出ている。
それを通して内部を窺え、内部からは先祖の魂や声が放出されるようでもある。
美しい光が交錯して霊魂を慰めている。

 

大きな突起を覗くとモニターが見える。
パイク氏の家族、先祖の写真などが次々に映し出される。

 

最後の方の一部です。

「韓国の墓」のためのドローイングか。
時間が渦巻き魂が放射される。
“ヴィデオは時間のARTである 時は流れ、過ぎ去るものは常に美しい“
とコメントされている。

 

「パイクから成子への手紙」
シゲ子千手観音(せんじゅかんのん)と赤で書かれ、千手観音と思われる絵が描かれている。
“シゲ子へ 私達が若い時、あなたは最高の恋人
老いた今、あなたは最高の母であり最高の仏様 ありがとう”と書かれている。

 

さて以上が「Viva Video!久保田成子展」の略々でした。
前衛的なアートにおいてもふる里の山河や両親や伴侶、そして人生・宗教観などの脈絡が通底していることが垣間見られ、僭越ながら人間久保田成子を身近にすることが出来た。

久保田さんのことは2014年、一緒に食事をしたご夫婦から初めて聞いた。ご夫婦はこの度の展覧会をご覧になり、私に話してくださり、長岡行きのきっかけになった。

知ってみると、久保田さんとは過去にごく小さな縁があったことが分かった。
・小学校5年生の時にピアノを習うため、直江津高校の直ぐ下のトンガリ屋根の久保田家に通い、成子さんのお母さんに教わった。
・母校髙田高校3年生の校長は成子さんのお父さん(久保田隆円先生)だった。
・当展覧会最後に成子さんに関するヴィデオ・コラージュ作品があった。そこで北川フラムさんのインタヴュー映像を観た。その中で氏は、姉が若い日、年上の成子さんと美術を通して親交していた事を話された。
私はその姉という人と附属中学校でクラスが一緒だった。

余談ながら、その人は美しく聡明で美術に造詣深かった。ある日の美術のテーマが「壊わす」だったかで、それについて描くことになった。私は困り、何故か下駄が燃えている絵を描いた。すると彼女がやってきて、いいね、いいね、と盛んに囃したことを覚えている。

そんなこんなで、作品の興味とともに、この度の久保田成子展はこれまで観た美術展で最も親しめ楽しめる催しとなった。
時間が紡ぐ運動と現象、それに関わる私達の意味。見過ごしがちな深いテーマをヴィデオによって切り取り探り、作品化を試みる。
若くして渡米し、現代芸術の巨匠たちと親交し、ヴィデオアートの可能性を先駆的に切り開き、世界に認められた久保田成子さん。上越でもっと知られ評価されるべき人ではと、自分を棚に上げて、思った。

6月6日(日曜日)までの会期ですので、道中気を付けてご覧になっては如何でしょうか。

今後本展は
国立国際美術館で2021年6月29日(火)– 2021年9月23日(木・祝)
東京都現代美術館で2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
を巡廻する予定です。

2021年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

▲ このページのTOPへ