2021年3月11日

「続 良寛遺墨集ーその名筆とゆかりの人々」と齋藤三郎作品 3・11のこと。

2021年3月11日(木曜日)

書物「続 良寛遺墨集ーその名筆とゆかりの人々」 全二巻  序・泉田玉堂、 執筆・小島正芳、 企画編集・ 関谷徳衛 淡交社発行 2021年2月26日発売。
執筆者の小島正芳さんから届けられた函入りの大型本は素晴らしかった。

かなり昔、何冊かの良寛さんの本をすがるようにして読みそれなりに心酔した。何も無いというが全てがある人、良寛。そんなイメージを今でも抱いている。

このたびの本は一言で言えば「美しい本」だと思う。渋いグリーンを基調にした装丁が施された函入りの上下二巻は読みやすく、大変親切に編集、執筆されている。良寛は勿論、その縁者、後年の理解者、名だたるフアンまで作品と説明は逐一丁寧だった。
第一巻は作品写真で、それらは大きく色彩は自然で、釈文や読み下しが附され心おきなく鑑賞できる。第二巻は作品のモノクロ写真の再掲にさらに詳しい解説が加わる。
巻末に附された良寛の年譜、系図、440余人にわたるゆかりの人々や膨大な参考文献などは綿密で、専門書と同時に安心な入門書でもあるまいか、と思った。

ページをめくる度に師の貧しさと清らかさ、美しさと深さ、あるいは人間らしさなどが浮かび、読む人それぞれの良寛に出合うことができるのではないだろうか。

 

 

 

渋いグリーンを基調にした函と本の麗しい装丁。
お茶を服すように爽やかな印象。

本中の一部。一閑(右)および思無邪(左)。
以下解説の要旨。
閑は心の中がのどかで無心であること。良寛が大切にしていた心境。
思無邪:思ひ邪(よこしま)無し。論語にある言葉。
執筆の小島先正芳先生がよく口にされます。

 

特筆中の特筆。
ゆかりの人として齋藤三郎作品(左)が掲載されている。
皿のふちに良寛の詩から「花開蝶来」がしたためられている。
右は北大路魯山人の筆筒(ひっとう)。魯山人と並び示されるとは。

「続 良寛遺墨集ーその名筆とゆかりの人々」 (株)淡交社 令和3年3月12日 初版発行
A4判変型 2巻セット(ケース入) 総400頁 (カラー208頁・モノクロ192頁)の体裁で17600円です。

●ちなみに細川家ゆかりの永青文庫美術館(東京都文京区目白台)で「心のふるさと良寛 Ⅱ」が今年4月24日~7月4日の会期で開催されます。
小島先生は本展も監修され、齋藤作品が展示される予定ということで、とても光栄です。

先生の講演会「齋藤三郎の絵と書」が来たる4月3日、午後3時から樹下美術館で開催予定です。

さて本日、東北大地震から10年が経ちました。当時仙台市に二家族、南三陸町に一家族の縁者がいました。いずれも直ちに音信不通となり、特に南三陸街町の弟は6日間も音信が途絶しました。
被災地の心配ばかりしていたせいか、長い揺れを覚えていますが、その時家に居たはずの自分はどこで何をしていたのかさっぱり思い出せないのです。仙台の無事は間もなく確認できましたが、南三陸町の方は、弟と親しかった小室等さんのルートから無事が知らされた経緯がありました。
丁度新潟市の知足美術館拙植物画の個展会期中。順調に推移していましたが、それどころではなくなりました。

ところで良寛の時代に三条を中心に震度7,1607人が失われる大地震が発生し、良寛は深く悲しみ、被災者を励ましたといいます。
地震の詩があり、その一節に“凡て物微より顕に至るは亦尋常”とあり、今日のコロナ禍にも通じる観点が示されていました(上掲本から)。
すべて物事は、かすかな兆候から始まり大事に至るのは世の常と述べているようです。

長くなりました。

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