新潟日報「Otona+」に載った倉石隆の版画「夜の唄」。

2020年9月1日(火曜日)

新潟日報のユニークな夕刊「Otonaプラス」。
内外のニュースほか、県内の生活・文化に関係した記事が凝縮されています。
中でも12面紙面の表紙から3ページを占める特集の充実ぶりには驚かされます。
2017年5月には樹下美術館が特集され、熱心なライターさんに詳しく取材と紹介をして頂き、沢山反応がありました。

このたび去る8月28日号の〝たずねるつながる〝は「画家が見つめた花火」という芸術ジャンルの特集でした。今年コロナ禍のため各地の花火大会は中止の止む無しです。
そこでせめて紙面を用い、花火をモチーフにした県内の美術館収蔵作品を見て廻る企画がありました。
2017年と同じライターさんから事前に連絡があり、意外に該当作品が少ない、ちなみに当館図録収載、倉石隆作品の版画「夜の唄」に花火が描かれていたように思うが、と問い合わせがありました。

「夜の唄」は縦横5,5×10,9㎝の小さな作品です。タイトルは「夜の唄」とありますが、描かれているのは花火だと思っていました。そのことなど、主観をまじえてお話のやり取りをした結果、紙面では以下のような記事として特集の最後を飾っていました。

 

以下は収蔵している原画です。左下端のエディションナンバーが、a、p(アーティスト・プルーフ)と書かれていますので、作品は作家保存分ということになります。

「夜の唄」
円(花火)をわずに中心を外して描くのも作家のセンス。

問われてお答えしたのは、倉石隆は詩的な人だったこと、夜空の円を花火だと思っていたこと、明瞭な形状から、花火はかって存在した確かな愛ではないかということ、そして車輪のような円は愛の強さかもしれない、と勝手な印象をお伝えしました。

また、物故により作家に尋ねることが叶わない作品の解釈を、鑑賞者が想像してみるのも、楽しみの一つでは、と追加させてもらいました。

ライターさんはとても上手くまとめてくださり、感心しています。
さらに氏は下に描かれた花園風のあしらいに注目され、〝そこからささやかな愛の唄が聞こえてくるように感じた〟と綴られました。
それによって「花火」と「愛」と「唄」が繋がりました。
私はともかく、ライターさんはさすがです。

小さな版画から、倉石氏の作意や秘めたる物語まで勝手にイメージをふくらませ、それを許して頂いた企画の大らかさに敬服しました。
関係者の皆様、ご取材とご掲載まことに有り難うございました。

特集には富岡惣一郎、草間彌生、岡本唐貴、蕗谷虹児、倉石隆の作品が掲載されていました。

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