会場を幸福で包んだ須川展也さんのコンサート。

2019年6月2日(日曜日)

今年前半の大きなイベント「須川展也 サクソフォーンコンサート」が本日無事終了した。
「無事」は本当に貴重なことで、「無事是貴人」という禅語がよく茶席の床の間に掛かる。
まして著名な演奏家をお招きし、70名近いお客様を迎えるコンサート。
事前の演奏者とのやりとり、チラシ作り、告知作業、プログラム制作。当日は会場設営、PA:音響スタッフによるセッティング、照明調整、演奏家到着、小休憩、リハーサル、着替え、開場、そしてスタートと挨拶、、、。どこかにミスやハプニングがあれば、お客様と演奏者に迷惑をお掛けする。しかも何気なく騒がしくなく進めたい。だから無事は余計貴重なことになる。

展示物を別室に移して椅子を入れた会場で全曲通しのリハーサルが行われる。
小さなホールのため残響が心配、場所を移動しながら全て試聴させて頂いた。
大部分、初めて聴く曲であり、いずれも新鮮で目が覚めるほど素晴らしい。

 

演奏風景。満席のお客様が残響を和らげ、ほっとした。
68名の来場者さんは当館ぎりぎりのキャパ。スタッフのお陰でなんとか無事着席して頂けた。

一曲目、カッチーニ/朝川朋之編曲、アヴェ マリア。前奏に続いて美しいMj7thコードの調べで始まり、自然に叙情の世界に引き込まれる。続けてグリーグの叙情小曲集から2曲が演奏され、スターウォーズのJ.ウイリアムスによる「エスカベイズ」、さらにG.フィトキンの「ゲート」と進み、モダンな動静の起伏が現れた所で15分の休憩となった。なんとも上手いプログラミングだった。

後半は西村朗作曲「ハーラハラ(猛毒)」はインドの天地創造の神話世界へジェットコースターで入っていくようなことになる。神々の相克、猛毒の大蛇、攪拌される乳界のカオス、現れるシバ神、ヘビとの格闘と断末魔、そして勝利や浄化も無く毒を吸い込んだシバ神の異様なゲップで唐突に終わる秀逸な曲。打楽器の如くキーを叩いて鳴らし、楽器を振り、うなり声を上げる演奏者、、、ブラボーを叫ばすにはいられなかった。

続く浜辺の歌、さらに須川氏が演奏したNHK朝ドラ「さくら」のテーマで心鎮めてもらった。
終曲は、石川亮太氏の「日本民謡によるラプソディー」。
津軽じょんがら、会津磐梯山、竹田の子守歌、炭坑節など、この国の哀切と歓喜が四季の色彩の合間から浮かんでは消える。
斯く上質な音楽が会場をスリルと幸福で包み、まれに見る楽しいコンサートが終了した。

 

盛大な拍手のなか退場するお二人。写真はお客様から頂きました。

 

終わって「ハーラハラ」が特別な曲だったので、譜面を見せていただいた。以下のようにまことに奇妙なものだった。

終えてサインに忙しい須川氏。

スタッフとともに後片付けを済ませて慰労会へ足を運んだ。

 

慰労会で挨拶される須川展也さんと傍らの美奈子夫人
自然なひととなりのお二人、良い音楽はまれに見る良いお人柄のたまもの。

アンサンブルピアニストとして確固たる立場に立たれている美奈子さん。
流麗な伴奏で氏を促し、呼応しあって劇的なパフォーマンスを創造される。
ハーラハラでは良いお声で、曲中に語りを入れられ、本当に見事なコンビネーションでした。

サクソフォーン奏者のトップランナーとして、挑戦を続ける展也さん、パートナーの美奈子さん、誠に有り難うございました、どうかまたいらしてください。
スタッフの皆さん、本当に有り難うございました、また頑張りましょう。

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