2019年4月30日
昨日,十日町は松之山の百体庚申塔と松代は洞泉寺の庚申塔を訪ねた(庚申塔その19) 仕事して良かった平成の最終日。
このノートのカテゴリに「花頭窓、二十三夜塔、庚申塔、社寺」がある。
そもそもは昨年6月上旬、上越市は黒井の大慈院で見た火頭窓の感激から発し→上越市浦川原は顕聖寺の二十三夜塔への興味→10月魚沼行きで見聞した庚申塔という順序で対象が拡がり、新たにカテゴリが出来た経緯がある。
庚申塔は近隣の板倉区、浦川原区、三和区、柿崎区、大潟区、頸城区、髙田公園を訪ね、さらに東京都目黒区さらに京都と奈良でも訪ねた。
その後雪と寒さのため、今年は3月3日を最期にひと休みしていた。
昨日、日曜日は何とかお天気が持ったため、午後かねて念願の十日町松之山は黒倉の百体庚申塔を観に出かけた。
途中松代は室野の路傍で予定に無い庚申塔に出会った。庚申塔探訪には思いがけない遭遇があることも楽しさの一つ。
合掌し、弓、矢、宝剣、宝輪を持った青面金剛(しょうめんこんごう)の石塔。
石段を上りきると曹洞宗の寺院「洞泉寺」だった。
堂々たる大寺の境内には雪が残っていた。
室町時代初期から続くらしい曹洞宗の名刹だった。
境内の指定文化材、大ケヤキの足許に石仏群。
衣服やショールをまとったようにほぼ全身苔に包まれている。
洞泉寺を後にして進むと、星峠の棚田へ至る道標があり、そちらに寄り道した。
これだけ人が集まっても観光商売をせず、棚田を維持出来るのは農業に強いプライドがあるからだろう。ほかに棚田独特の大規模な営農方法もあるのだろうか。
その後、黒倉集落で道を尋ね、100体庚申塔の駐車場へ着いた。
到着するまでの山あい谷あいに拡がる棚田群の多くが、良く手入れされていることに大変驚いた。山間では荒れて放棄された水田をよく見ているので余計だった。
駐車場に車を駐め石段を上ると、わずかに小高い場所に庚申塔群が広がっている。
向かって左下に黒倉から上ってきた道路が通っている。
多くは庚申塔と彫られた自然石の文字塔だが、所々に青面金剛を彫り出した仏像塔も見られた。やや南に小さなお堂が建っていた。
この像に寄ってみた。
合掌し、他の4臂で弓矢、宝剣、法輪を持っている。
上方左右に丸い日月紋様が見える。
足許に約束通りの見ざる言わざる聞かざるの三猿(さんえん)と、二鶏(にけい)とおぼしき部分が覗えた。
とても素朴なデザインだった。
向かって右の青面金剛像。
左右二体は様式と姿が似ている。同じ石工(いしく)あるいは師弟の制作なのか。
お堂を覗くと、全体の本尊と思われる青面金剛像が安置されていた。
六臂(ろっぴ・六つの手)であるが、合掌せず左手にショケラ(半裸の女人)と考えられる小さな像を握っている。他の五臂で弓矢、宝剣、槍?と法輪を持っていた。
愛らしいショケラの髪を掴んでいる。何故ショケラなのか、定説はない。
男だけの集まりが基本だった庚申待ち行事。当時のこと、女で身を滅ぼさ
ないようにと、いさめを込めたものか。
夕刻から夜明けまで経念仏、食事、茶話、時には歌舞あるいは飲酒や囲碁将棋、さらに一休みもあったという60日ごとの庚申の集い。
お開きとなる邪鬼が去る夜明けを告げる鶏は、猿とともに庚申塔定番シンボルの一つ。
数えてみなかったが100体もの庚申塔が集められている場所など全国的に極めて希ではないだろうか。明治時代前半のころ、篤志家の発案で当地に100体を造り、ここに集めたという。悪事を謹み、先祖を供養し、豊作と地域・家内の安全を願った庚申信仰。篤志に賛同した他地域からの寄進もあったという。
当時の農村の暮らしは、今読んでいる「生きづらい明治社会(松沢裕作著 岩波書店2018年12月5日第三刷発行」にも詳しい。
辛く大変だった明治の農村。
いま庚申塔に出会うと、少しほっとする。
ところで100庚申の駐車場と、園内はきれいに管理されていて気持ち良く、黒倉の人々の丁寧なもてなしの心が伝わってきた。
昨年掘川紀夫さんに大地の芸術祭に連れて行ってもらったが、このたび見覚えある場所を何カ所か通過して懐かしかった。
さて十連休中の本日は平成最期の日。意識した訳では無かったが、予め案内を配り開院した。30名近い受診者があり、入院が必要な方も来られ、開けて良かったと思った。
樹下美術館の昼は、17台の駐車場が珍しく満車になっていた。
本日をもって御退位される両陛下のご健康を心からお祈りしたい。
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