庚申塔その11、上越市板倉区の庚申塔、山寺薬師と三尊像。
昨年10月下旬の魚沼行き以来のマイブーム庚申塔。
あっちこちしながら庚申塔その11になった。
新年2日は昨年を振り返り、11月12日および17日に
訪ねた上越市板倉区の庚申塔についての見聞を記して
みたい。
そもそもなぜ板倉区だったかといえば、魚沼から帰り、
ネットで上越市の庚申塔とひくと、新潟県で最も古い
とされている庚申塔が板倉区にあると知ったからだっ
た。
魚沼の頃は、まだ二十三夜塔を見るだけで精一杯、庚
申塔は魚沼の女性から聞かされただけ、写真なども偶
然ほかのに写り込んでいたというレベルでしかなかっ
た。
サイトにあった板倉の塔は如何にも素朴、可愛い猿が
二匹青面金剛になつき、2鶏と日月の文様も彫られて
いて塔の諸要素をあらかた満たし、魅力的だった。
場所は福王寺と記され、地名も良かった。
訪ねた11月12日すぐには場所が分からず、ゑしんの
里記念館へ行き、場所の手がかりを尋ねた。
スタッフの皆さんのお陰でおよその場所が分かった。
福王寺を歩いているとあるご夫婦と出合った。
話をすると、すぐそこということ、ご主人が案内して下
さった。
場所は十二社だった。
案内された右端の石祠を覗くと小さな像が認められた。
左右に猿とおぼしき像が手を差し出している。
石祠に収められている庚申塔もあるんだ、と少々驚い
た。見づらかったせいもあり、鶏と日月の紋様は判然
としなかった。
これが板倉区紹介サイトに掲載されていた写真。
単体として光背を有し、金剛、猿、鶏、日・月などくっ
きり彫り出されている。
当日十二社で見たものとかなり違い、ほかにこのような
石塔があるのだろうと思った。
※後で分かったことですが、私が見た石祠の像はまさに
この石塔であり、それが石祠にはめ込まれているような
のです。
いつかこの写真のように取り出された庚申塔を見てみた
いと思っています。
案内して頂いた方は上石さんと仰り、自分より父が詳し
いとのこと。そのお父様はあいにく歯科の治療に出てい
るが、電話をしてみます、と言って話を進めて下さった。
電話から十二社のすぐ下に公民館があり、その裏手に石
塔などがまとめられているという事だった。
※その後、上石さんのお父様・孟さんは地元の石仏や地
域の信仰史を研究されている方と知り、後日貴重な資料
を沢山届けて頂きました。
公民館で初めて全貌が分かる石仏の庚申塔を見た。
キリッとした眼差しが印象的。
六臂(六つの腕)の金剛は弓矢を持ち、上方の手の玉の
ようなものは宝輪か、もしかしたら日・月なのか、私に
は分からなかった。邪鬼と鶏は認められなかったが、両
側の猿といい、しっかりと彫られた庚申塔を見る事が出
来て大変に幸せだった。
小さな集落でこのような石塔まで残す庚申の行事とは何
なのか、像が象徴する意味とともにますます興味がつの
った。
当日、区のホームページにあった像を見ることができな
かったが、再度来訪し探してみることにした。
公民館の傍らに可愛いい四角形の二十三夜塔があった。
もしかしたら江戸の後半期か、この集落の女性たちは
二十三夜の月待ちをどのように過ごしたのだろう。
小ぶりな塔を見て、慎ましくも楽しかったであろう情
景を思い浮かべてみた。
この日の帰路板倉区曽根田で文字塔にも出合った。
大廣寺境内の庚申塔。上部に日・月が彫られている。
古い庚申塔あるいはゑしん尼のイメージせいで、板倉
区にそこはかとない仏気(造語です)漂うのを感じてい
た。
以上が11月12日、一回目の板倉訪問だった。
当ページ四番目の写真のような可愛い石塔を是非とも
自分でみつけたいと(前記※以下のように、実は見て
いたのですが)思い、11月17日に板倉区を再訪した。
前回ゑしんの里記念館を訪ねた折、同区山寺薬師近く
には幾つか庚申塔がある、とも聞いていた。
行き馴れない場所であり、自分でも地図を描いて訪ね
た。
土曜午後遅く出たのと、牧区の宮口古墳に寄ったため、
ゑしんの里 やすらぎ荘通過が4持半過ぎ、夕のとばり
が降り始めていた。
初めて通る暗がりの道に幾つか急カーブが続く。
途中、頸城地方で最も古い石塔の一つと言われる応永5
年(1398年)建立の宝篋印塔(ほうきょういんとう)
にも寄り、その後の沿道で二つの庚申塔に出合った。
最初の文字塔。私の背丈よりずっと高い。
頂の○は日月(にちげつ)のシンボルなのか。
文字デザインもおしゃれだった。
山寺に近づく頃に現れた文字塔。これも高く上方に○
が彫られている。角柱型の石に深く堂々と彫られていた。
山寺薬薬師到着は5時だった。
暗がりのなか、まっすぐ急な石段が伸びている。
転ばぬよう207段を上ると薬師堂。
闇のなか堂内に明かりが点き、大きな木彫の仏像三体が
窓の格子越しに浮かんだ。
迫力の薬師三尊像(釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来)。
(いたくら観光ガイドから引用)。
当仏像建立も応永年間であり、前記した宝篋印塔とほぼ同
時期に当たっている。
“応永2年に三善氏によって寄進されたものであるというこ
とが、作者である京都六条の仏師築後法眼と共に胎内に銘
記されています。仏像は桧の寄せ木造りで、遠く京都から
運ばれたといいます。昭和33年に県文化財の指定を受けま
した”(上記サイトから引用)。
真っ暗なお堂で突然見た大きく立派な仏像にとても驚き、
かつ圧倒された。
まだ木の香りがしそうなほど、あるいは出来たばかりと紛
うほど生き生きと感じた。
再びここを訪ねることにして、急な階段をソロリソロリと
降りて帰途に就いた。
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