塩﨑貞夫作品、風景画の気。

2018年5月3日(木曜日)

現在展示されている塩崎貞夫さんの「桜のレクイエム
塩﨑貞夫展」について、予告を含め、文字通り私なり
に何度も書かせて頂いた。

自らの作品の意図あるいは意味について語ることを控
える画家は少なくない。“ご自由にご覧下さい”という
風に、あまねく観る人に任せる姿勢であろう。

当館の常設、倉石隆氏も同様、“説明が必要な作品は
往々にして良い絵ではない、と座談会で語っている。
塩﨑作品の鑑賞者との関係も同様のように思われる。
(ご本人とお会いした事がないこともあり、、、)

氏について私が知っている事と言えば、かなり早い時期
にフォーレのレクイエムに触発された、の一点くらいで、
本人は奥様にも作品の意図などを詳しく話される事はま
ず無かった、とお聞きしている。

文学、音楽と異なり絵画は作品自体の時間軸が明瞭で
はない。
何を感じ、何を読み取るかは瞬時も可能であり、長時間
の反復も厭わず、大変に独特だ。
だが作品は往々、そこに至る年月、手がけた時間、意図と
工夫、費やされた心身エネルギー、はては作家の生活史ま
でを思わずにはいられない、ものがある。
また料理のように噛めば噛むほど味わい深くなる事も。

そんなことで、この度の作品を連日目の当たりにして作者
の風景画には“気”と呼べるような自然の力、わけても霊力
や仏性など、一種神秘性を見逃す訳にはいかない、とよう
やく感じるようになった。

観る人にはよく見える山河の気は、魂あるものとして作者に
描かずにはいられない衝動を起こさせたと、言えまいか。

 

1
「夜桜」。闇を己の色に染め上げる花、、、。西行法師、梶
井基次郎、坂口安吾が語った桜の神秘性がほとばしるように
描かれる。

 

2
「カクダノヤマ」。弥彦、角田、国上、新潟県の蒲原平野が
海に接する場所の山々は、古い神々の物語や仏性を帯びる。
この作品の山頂から空高く、明るく吹き出しているのは霊魂の
気のようだ。

 

3
「麒麟山」。幸福の前触れとして現れる中国伝承の動物、麒麟。
山はほのぼのとした大気にまろやか、かつ暖かく包まれている。

 

 

4
「海」。晩秋の日本海か、見慣れた風景。海原は一瞬に波の
姿に変わると同時に時空へ消える。はかなくも果てしない悠久
の心象は心に染みる。

 

311
「弥彦山の磐座」。先も書いたが、神さぶる清々しさが空を
澄んだ青色に染めている。軟らかなシンメトリーの安堵。

塩﨑氏の風景は一見静謐で慎ましく、あるいはのどかに描か
れるが、それぞれが有している“気”は心深く届く力を有して
いるのではないだろうか。
“自由に観て下さい”と言われて、勝手気ままに書ける所が、個
人施設の得なのでしょうか。

長くなりました、皆様はいかがでしょうか。

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