もう一枚の陶齋の色紙『清泉石上流」は茶会でどう使う?

2017年7月26日(水曜日)

一昨日、陶齋の色紙「行人歸去雨瀟瀟」のことを書かせて頂い
た。
樹下美術館にはもおう一枚「清泉石上流」があります。

開館に際して友人に持参して頂いたもので、清泉の語感や流れ
のイメージから季節は夏であろうと漠然と考えていました。

 

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「清泉石上流」、〝せいせんせきじょうをながれる〟と読むの
であろう。

この五言は中国の唐時代の詩人王維作「 山居秋瞑」の一節
でした。
出典の五言八句の詩は、春に山居へとやって来たが、雨上が
りの秋の月や、清らかな流れなどを見ていると、まだここに留
まりたくなった、という心境が述べられています。

一見夏の清涼を謳っているのかと思っていましたが、原典は
秋。
この一節の茶室向けの掛け軸があるようですが、どの季節に
掛けたらよいでしょう。

夏なら、
客「山水の流れの清々しさが伝わる良いお軸ですね」
亭主「有り難うございます、陶齋の若い時代かもしれません」
で簡単に済むかも知れませんが、客のだれかが秋の詩だと
知っていたら、どう展開するでしょうか。

一方、秋の詩だと承知して秋の茶会に掛けたとしてみると、
客「今は秋ですが、お軸は夏の清々しさが残っている風情を表
しているのでしょうか」
亭主「いえ、秋の山居の月や流れの風情の良さを詠じた漢詩
の一節なのです」
客「なるほど、それでは周囲は紅葉が見られるかもしれません
ね」
これでは話がぎくしゃくしますし、そもそも中国では日本のよう
に秋→紅葉のイメージが一般的かどうかも判然としません。

夏に出す場合は、
亭主「出典は秋の漢詩ですが、この一節はとても涼しさを感じ
させますので掛けさせていただきました」
と説明すれば良いかとも思われます。
旧歴では現在の8月は秋なので清涼も自然なのですね。

私は詳しくないのですが、作者の王維は6世紀末~7世紀の唐時
代の人で特に山水の風情を謳うのに優れていたそうです。

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