2015年11月6日

ジャコメッティの「早く明日になればよい」  倉石隆の言及。

2015年11月6日(金曜日)

良いお天気が続いていましたが、明日からしばらく
ぐづつくようです。
昨日は「早く明日になればよい」というアルベルト・
ジャコメッティの呟きを書きました。

同じ言葉でももしも私なら、楽しい予定を待ちきれ
ないでいる幸福なつぶやきでしょう。
しかし「見る人」のジャコメッティでは、およそ以下
のように書かれていました。

彼はモデルを前にして言います。
「千年、きみがそこにいるかのように仕事をしなけ
ればならない」と。
そして絶え間なく仕事を思い一分も待ちきれずに
仕事に掛かっていたそうです。
膨大な仕事量は多才や量産を誇示するものではなく、
失敗を繰りかえすことによって、少しでも真実に近づ
くことを願っていた、という事でした。

トイレに行く時間も寝る時間も惜しむ生活の中で、仕
事を中断してアトリエを離れたとき、仕事を続けたい
一念から思わず呟いた言葉が、「早く明日になれば
よい」だったのです。

寝るヒマがあるくらいなら仕事をしていたい。
今日以上の仕事をしたい待ち切れない明日、、、。
ジャコメッティの明日は、さらに真実に近づくための
明日だったことになります。

そんな生活で、あるモデルを写そうと製作を続けた
時のこと。
似せれば似せるほど像は小さくなり、ついに石膏が
米粒よりも小さくなって消滅した、そうです。

これは笑い話ではなく、人間の事実を写そうとすれ
ばあり得ることかもしれません。
樹下美術館のわが倉石隆(当時56才)は「戦後美
術の流れの中で 座談会Ⅲ 幻想とは」
(主体美
術1972年)に於いて、尊敬するレンブラントと
ともにジャコメッティに言及して次のように述べて
います。

「幻想という事を僕なりにとらえるとすれば、ジャコメ
ッティの消えそうな形の中に大きな宇宙を感じたり、
レンブラントの顔のしわの中にも小さな宇宙があって、
そういうふうにものが実在するという感じがなまなまし
い程何か神秘的で幻想的なんだなあ」。

本日の「見る人」は40ページまででした。

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Yahoo!の時計は間もなくひと月ですが、ほぼ
正確に動いています。

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