色絵黄蜀葵(とろろあおい)文鉢 陶齋初期の欧風

2011年8月3日(水曜日)

父の蒐集をつなげて齋藤三郎を集め、2007年6月に樹下美術館へ到達しました。美術館を始めて良かったことの一つは、新たな作品や古い時代の作品に出会えるようになったことです。

齋藤三郎は戦前、近藤悠三と富本憲吉への師事を経て昭和23年高田に登り窯を築くと、本格的な作陶活動を始めました。

先月中旬、珍しい色絵黄蜀葵(いろえとろろあおい)文鉢が樹下美術館へ巡ってきました。箱書きにある“黄蜀葵”は読めませんでした。ネットで打ってびっくり、トロロアオイと読むのですね。
裏面の署名わきに初窯と記されていましたので、まさにS23年高田における開窯第1号作品群に相当します。

色絵黄蜀葵文皿
色絵黄蜀葵鉢
柚子文鉢の裏面
色絵柚子文鉢の裏面

筆の穂先を生かした描画と異なり、一様な輪郭線で描かれた黄色の花に細い葉が配されています。九谷風かつデザイン性の強い当作品に一種欧風の印象を受けます。

欧風なものとして同時代の色絵柚子文鉢の裏面があります。色とりどりの美しい三角模様が輪として楽しく描かれ、大変エキゾチックです。

 

これらヨーロッパ風な紋様は、師である富本憲吉が渡英までして心酔したイギリス人ウイリア・ムモリスの影響が陶齋にも及んでいるのではないかと考えられます。モリスは19世紀のアーツアンドクラフト運動を牽引するモダンデザインの第一人者として旺盛な活動をしました。

黄蜀葵の器は残念ながら顔料の剥落がかなり見られます。同じ初窯作品でも以下の鉄絵や染附(そめつけ)は見事に仕上がっています。黄蜀葵は、二度焼きを必要とする色絵磁器焼成の試行錯誤を物語る貴重な資料としても大切にしたいと思っています。

 

鉄絵葉文鉢
鉄絵葉文鉢
染付け繪変わり皿
染附繪変わり皿

ちなみ黄蜀葵はオクラと近い植物で夏の一日花。和紙をすく時に繊維のつなぎとして用いられてきた、と言うことです。

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