2011年6月10日

煙突女学校 世が世なら

2011年6月10日(金曜日)

この人は輪ゴムが好きで、ゴムをはめたままだったのでうっ血したんでしょうか?嫁ぎ先で100才近い実母をみている奥さんが言った。
ゴムの跡から先のお年寄りの手が赤く腫れていた。症状はさほど問題ないが、うっ血の言葉を正確に使われたので少し驚いた。

 

看護師さんをしていたのですか?と訊いた。
 「ああ恥ずかしい全然です。私は煙突女学校ですワ」と仰った。うっ血はテレビで聞いたかもしれない、ということ。それにしても煙突女学校とは。

 

「私ら中学校を出てすぐ富山の紡績工場へ就職しました。高い煙突がある大きな工場で、学校みたいに見えるので、煙突女学校と言ってました」。工場の寮生活ではお花や裁縫を習い、ある種学校の雰囲気もあったという。

 

「家に金が無かったから高校へ行ってません、そのかわりの女学校ですね。みんなもそう言ってました」。
富山の紡績工場、、、呉羽かな、、、高校の地理で習った。この人はそれを実際経験している。聞いたことがない言葉も、、、。

私より二つ上の彼女は常におおらかで明るく、介護の要点を把握し、質問なども要領を得ていた。
「こんな年まで世話かけて悪いね」
ある日、一緒に入浴した母親が言ったという。彼女は“そんなことはない、長生きはいいことだって新聞に書いてあったよ”と答えた。新聞に書いてあった、の一言が効いたのか親は安心していました、と笑って話してくださった。
なるほど確かにそうだ、賢い人だなあと感心した。

 

F子さんは、高校や大学へ行かなくとも、何かと適切に振る舞う代表選手のようだ。もしかしたら富山では周囲や上司の信頼は厚かったかもしれない。明るくはっきりしている言葉からそう思った。

 

お顔もどことなく上品で、職人あがりの静かな旦那さんはいつも幸せそうに日曜大工に勤しんでる。

 

彼女もまた「世が世なら」の一人なのか。少なくとも余計なことを考えないで、現実に直面できる望ましい性格の人なのだろう。うっ血からそんなことまで考えてしまった。

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ブラッシング・ノックアウト:清楚で強く美しい
 

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