海を旅した陶片の女の子

2010年6月9日(水曜日)

 食事の部屋の書棚に海へ行った時に少しずつ拾った陶片が置いてある。シーグラスと同じで、海に捨てられた茶碗や皿など(またそのかけら)が海底を旅して割れて細かになり、角がとれたものだ。おしなべておだやかな形状になっている。

 なにしろ海はあらゆるものを揺すって揉んで洗う。固くトゲトゲしたものなどみな小さく丸くする。最後は砂にそしてミネラルまでしたいのだろう。ありあまる時間と何かのはずみで命まで作ってしまったのだから、海のなんという根気と力だろう。

 

 いっぽう地上は社会などもあって複雑だ。しかしそこで我々も海と同じようにゆすられ揉まれ洗われる。最後はやはりミネラルだろうが、できれば文化を創ることを期待されている。偉そうにする必要はないが、茶碗と私たちの違いはそのへんかもしれない。

 

 さて昼食後、何気なく陶片をみていると一つのかけらが気になった。 

IMG_2893 
さわやかな陶片

 

 手に取ると突然女の子の顔に見えた。上目づかいで真剣に前を見ている。あごから頬の線も愛らしく愛着を覚えた。

 

 不思議なもので一度そう見てしまうとあたかも女の子が描かれたような気がしてくる。実際は波、渦巻き、秋草などが描かれているようだ。

 

 かけらと私たちは異なる存在だが、こうして楽しく出会えるのも何かのおぼしめしにちがいない。

 

顔 
顔・長径3,5㎝ほど

 

裏
裏側・高台があり、大きめの皿のようだ

 

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