一枚の写真から50年

2009年6月20日(土曜日)

 私には2つ上の姉がいる。古い話だが姉は小学校を卒業すると旧高田市の中学校へ通った。高田は汽車でゆうに50分かかった。

 

 学校へ通い始めて間もなく姉は、とてもきれいな同級生がいる、と言った。ある日一緒の写真を撮ってもらったといって見せてくれた。体操着の女子数人がグラウンドでポーズをとっている写真だった。

 

 昔の写真は名刺ほどもなく小さい。しかし真っ白な体操着のNさんは特別愛くるしく生き生きと写っていた。あと二年、自分も高田の中学校へ行けば三年生のこの人を見ることが出来る。田舎坊主の5年生が抱いた淡いあこがれだった。

 

 しかし、彼女は間もなく転校してしまった。願いは叶わなかったが、本日午後なおえつ茶屋でこの人に会えた。花柳紀寿郎(紀子)さんは現に愛くるしい面立ちの人だった。

 

 姉が見せてくれた写真から50年以上が経っている。コーヒーを終えて私から名乗った。姉を良く覚えていると仰り喜んでくださった。眼前の人にはとても魅力的な手応えがあったのに、私の方はすーと透明になってしまった感じがしていた。

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